大分稚臣

大分稚臣とは

大分稚臣（おおきだ の わかおみ）は、飛鳥時代に生きた重要な人物であり、その名は「稚見（わかみ）」とも表記されます。彼は、大分君という姓を持つ豪族の一員であり、彼の活躍は672年の壬申の乱において特に際立っています。

壬申の乱での貢献

壬申の乱は、当時の日本を二分する戦争であり、大海人皇子（後の天武天皇）と大友皇子（弘文天皇）の間で繰り広げられました。稚臣はこの乱において、特に目覚ましい功績を残しました。

彼は、近江大津宮に滞在していた際に乱の勃発を知り、戦局を有利に進めるための行動をとります。6月24日には、大海人皇子の指示で吉野から大分恵尺とともに大津皇子の元に向かい、脱出と伊勢国での合流を依頼しました。

大津皇子と高市皇子はそれぞれ早急に伊勢へ向かい、稚臣も大津皇子の集団に加わりました。両皇子は6月後半に父・大海人皇子との再会を果たし、兵力を整えました。

その後、彼らは美濃国で集結し、稚臣は大海人皇子の軍の一部として近江へ直行することになります。この軍勢は、7月7日から続く連戦で勝利を重ね、22日には瀬田に到達します。瀬田川は近江宮を守る最後の防衛線であり、ここでの戦闘が流れを決定づけることになりました。

瀬田の橋での激闘

瀬田の橋が戦闘の焦点となった際、近江方の先鋒将の智尊は、巧妙に仕掛けを施して大海人皇子の軍を待ち受けていました。しかし、稚臣はその厳しい状況を打破するために奮闘しました。彼は武器を捨て、鎧を重ね着し、刀を抜いて特攻しました。

彼は仕掛けの板を踏んで進み、綱を切り、敵陣に突入しました。その瞬間、近江方の兵士たちは動揺し、壬申の乱の勝敗はこの激闘によって決定しました。

戦後の評価と栄光

戦争が終結した後、稚臣の功績は広く評価されます。『日本書紀』には、12月4日に功績のあった者に冠位を与えたと記載されています。稚臣は、この時に与えられた位は小山位以上であったと推測されます。

さらに、彼は兵衛として勤務していたことも記録されており、兵衛は王宮の護衛を担っていました。天武天皇8年（679年）3月6日に彼は亡くなります。

しかし、彼の名誉は死後も続き、外小錦上の位が追贈されました。小錦上は高位ではありますが、稚臣には外位が与えられることとなります。これは彼の功績を称えつつも、中央の貴族と同列にはできない事情からの措置と考えられます。

まとめ

大分稚臣の人生は、彼の兵士としての奮闘と、戦乱の中での絆の強さを象徴しています。彼は戦乱の中で自らの使命を全うし、その功績を後世に伝える存在となりました。彼を祭神とする大分社は、その名を今もとどめています。

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