大向美智子

大向美智子（おおむかい みちこ）

1975年5月30日生まれ、岩手県久慈市出身の元女子プロレスラー。プロレス界引退後はセラピストとして活動している。久慈市出身であり、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で話題になった「かわいすぎる海女」大向美咲は親戚にあたる。

小学生の頃、人気絶頂だったクラッシュギャルズに憧れてプロレスラーを志す。1991年に中学を卒業すると同時に、名門全日本女子プロレス（全女）の新人オーディションを受験し、合格。同期には前川久美子、玉田りえ（凛映）、長谷川（白鳥）智香子らがいた。入門後、度重なる怪我に見舞われ、プロテスト合格までには時間を要したが、後楽園ホールの通路で黙々とスクワットを続ける姿が関係者の目に留まり、その気迫と根性が認められてプロ入りを許される。しかし、1992年1月11日に行われた中見川志保戦でのデビュー後、練習中に負った右膝十字靭帯の怪我が完治せず、一度はプロレスラーとしてのキャリアを断念した。

1993年、旗揚げされたばかりのLLPWに対し、プロレスへの情熱を捨てきれず再デビューを直訴。厳しい試練の連戦を乗り越え、正式にLLPWへの入団が認められる。1994年9月27日、LLPW大阪大会において、全女の長谷川咲恵、伊藤薫組からLLPWの半田美希、紅夜叉組に移動していた全日本タッグ選手権に、キャロル美鳥とタッグを組んで挑戦。見事王座を奪取し、第18代王者となるも、後に全女の吉田万里子、玉田りえ組に敗れ王座を失う。1995年から1997年にかけては、そのルックスからLLPWのアイドルレスラーとして脚光を浴び、FMWのシャーク土屋との抗争や、写真集『BLOOMING』の発売などで話題を集めた。しかし、団体のベテラン勢の壁は厚く、選手としての評価や価値をさらに高めることに伸び悩みを感じていた。そんな折、1997年夏、経営難に陥っていた全女を退社した元広報部長の小川宏や、中心選手だったアジャ・コングらが設立準備を進めていた新団体アルシオンから、ヘッドハンティングの誘いを受ける。同期の二上美紀子（GAMI）と共に移籍を決断し、LLPWを退団した。

1998年2月、後楽園ホールで開催されたアルシオンの旗揚げ戦に出場し、いきなり団体エースであるアジャ・コングとのシングルマッチに挑む。結果はレフェリーストップによる敗戦となったが、試合中に見せた蹴り技などの打撃を中心とした新たなファイトスタイルを提示し、新生・大向美智子を印象付けた。アルシオンでは所属選手にライセンスナンバーを付与しており、大向に与えられたナンバーはNO.5だった。1999年、アルシオンが主催するシングル・トーナメントであるARS（5月開催）とZION（8月開催）の両方で優勝を果たす。ARSではGAMI、キャンディー奥津、矢樹広弓を、ZIONでは玉田凛映、GAMI、下田美馬といった強豪を連破し、シングルプレイヤーとしての実力を飛躍的に向上させた。2000年には、前年からアルシオンに参戦し、団体の所属選手と対立していた下田美馬、三田英津子の「ラス・カチョーラス・オリエンタレス」に急接近。さらに府川唯未を巻き込み、美形レスラーによるヒールユニット「VIP」を結成する。VIPの中でも特に下田美馬とは息が合い、同年4月7日の川崎大会では、アジャ・コング、吉田万里子組からツイン・スター・オブ・アルシオン王座を奪取した。また、GAMIが率いるユニット「Re Drug」らとも激しいユニット抗争を展開し、団体を盛り上げた。2001年、アルシオン内で最も早くアジャ・コング越えを果たし、クイーン・オブ・アルシオン王者となっていた後輩の浜田文子に宣戦布告。同年7月3日の後楽園ホール大会で壮絶なタイトルマッチを行ったが、王座奪取には至らなかった。前後してアルシオンに参戦したライオネス飛鳥が同年11月に浜田文子からクイーン王座を奪取すると、大向はターゲットを飛鳥へと切り替える。またVIPを解散し、後輩の藤田愛を新たなタッグパートナーに指名。チーム名を「サイバージャンクス」としてタッグ戦線に参入した。2002年2月、サイバージャンクスとしてツインスター・オブ・アルシオン王座を獲得。そして同年5月11日、ついにライオネス飛鳥からクイーン・オブ・アルシオン王座を奪取し、名実ともにアルシオンの頂点に立った。

2003年2月、団体の経営難に伴いアルシオンを退団し、クイーン・オブ・アルシオン王座は返上となった。以降はフリーランスとして活動を開始。同年5月11日には、全日本女子プロレス創立35周年記念大会において、新日本プロレスの金本浩二と一夜限りのミックスドタッグを結成し、話題となった。年末には吉田万里子、AKINO、中西百重、Baby-Mと共に、フリー選手によるユニット「M's Style」を結成（後に中西は離脱）。定期的に自主興行を開催するなど精力的に活動した。2005年6月28日、総合格闘技イベント「スマックガール」に「リアル女子プロレスラー」として参戦。プロレスラーの美濃輪育久から特訓を受け臨んだ一戦では、韓国のイ・ヒジンを相手にバックドロップを決めるなどプロレス技も披露。鼻骨骨折で鼻血を流しながらもパンチの連打でTKO勝利を収めた。

2007年8月4日、女子プロレス専門誌「Lady'sリング」主催のイベントにて、結婚と同年12月9日の自主興行での引退を発表。引退試合は新宿FACEで行われ、アルシオン時代やM's Styleで苦楽を共にした仲間たちとの8人タッグマッチで自身のプロレスラー人生に幕を下ろした。結婚後は山口県山口市に移住。夫はアパレル企業の創業者一族出身で元ミュージシャンだが、結婚後は音楽活動を引退し、関連会社の役員を務めている。夫との間には一女一男を授かり、自身のSNSで家族の様子を紹介することもある。引退後もプロレス界との繋がりは続き、2013年には後輩である栗原あゆみの引退興行でセコンドを務めたほか、2017年には上井文彦プロデュース興行やスターダムの大会で一日限定復帰を果たした。2023年9月10日には、遠藤美月の引退興行で再び一夜限定復帰し、遠藤とのタッグで試合を行った。

現在は、山口県周南市の格闘技ジム「毛利道場」に所属するプロレスラー土屋クレイジーの要請に応じ、月に一度「Egoistプロレス教室」の講師を務めている。また、土屋クレイジーらEgoistプロレス所属選手の試合にマネージャーとして帯同するなど、プロレス関連の活動も続けている。2024年7月13日、マリーゴールド両国国技館大会に来場し、長女の心希（しんの）が同団体の練習生として入団したことを発表した。

主な得意技

裏投げ
タイガー・スープレックス
クレッセントキック
延髄ニー・ドロップ
Bスリーボム
トライアングルデヴィ
シャイニング・ウィザード
踵落し

主な著作物

写真集『BLOOMING』『ARTEMIS』『Nang Far』
ビデオ・DVD『ARTEMIS』『Nang Far』
* 映画『プレイガール』（2003年）出演

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