大和田通信所

大和田通信所

大和田通信所は、埼玉県新座市西堀と東京都清瀬市にまたがる在日アメリカ空軍の基地施設です。施設番号はFAC 3056で、かつて大日本帝国海軍が運用していた大和田無線通信所を前身としています。この施設は、無線通信の受信・傍受施設として利用され、戦後は気象通信所を経て米軍基地として接収されました。

概要

1936年（昭和11年）に開設されたこの施設は、2016年時点で1,197,700.81m²の広大な敷地を有しています。そのうち、私有地が758,857.03m²、国有地が438,843.78m²です。施設内には大型無線受信機23台、小型無線受信機200台が設置され、隊員用宿舎も併設されていました。特徴的なのは、高さ6mの黒い木製主柱90本が等間隔に建てられ、水平方向にワイヤーアンテナが張り巡らされていたことです。主柱には、ハワイ、シンガポール、マニラ、グアム、台湾など、受信地域名が記載された木製札が掛けられていました。

大和田通信所では、自軍の無線だけでなく、米英の無線も傍受・解読していました。1945年当時の傍受月報には、特定地域の周波数変更内容や、日本本土を空襲したB29爆撃機の援護にあたるF6F戦闘機の使用周波数などが記録されています。また、対米諜信活動（暗号解読作業）は軍令部第四部大和田通信隊A班が担当していましたが、英語を理解できる者が少なかったため、帰国米移民二世が選抜され、この業務に従事していました。

映画『ローレライ』では、この大和田通信所のシーンが撮影されました。

立地要因

大和田通信所がこの地に建設された理由の一つは、通信状態が非常に安定している点にあります。武蔵野台地の中心地に位置し、周辺には電波障害となる鉄道、幹線道路、民家などの障害物がなく、開設当時は農家が点在する森林地帯でした。また、周辺には東京航空交通管制部や防衛省情報本部大井通信所など、重要な無線施設が多く存在しています。

沿革

1936年（昭和11年） - 日中戦争開戦時、アジア太平洋地域の無線受信および傍受を目的として建設。
1937年（昭和12年） - 東京通信隊大和田分遣隊となる。
1940年（昭和15年） - 旧海軍気象通信所として設置。
1941年（昭和16年） - 太平洋戦争開戦時、帝国海軍大和田通信隊として独立。
1945年（昭和20年）8月24日 - 中央気象台へ移管。
1945年（昭和20年）9月13日 - 米陸軍第1騎兵師団へ施設引渡し。
1945年（昭和20年）11月 - 中央施設内通信設備を逓信省が処分。中央気象台大和田臨時出張所が創設。
1950年（昭和25年）7月 - アメリカ陸軍が中央施設を占有し、気象台が分室扱いとなる。アメリカ陸軍信号兵団第71信号役務大隊が受信施設として使用開始。後にアメリカ空軍第1956空路航空通信中隊が共同使用。
1964年（昭和39年） - アメリカ空軍の管理に移行。第1956空路航空通信中隊が第1956通信群に改編され、第3分遣隊が使用。
ベトナム戦争時には大和田作戦所となる。
1966年（昭和41年）6月7日 - アメリカ国防通信局極東通信管区司令官が電波障害対策として大和田通信所の移転候補地選定を要請。
1966年（昭和41年）6月17日 - 防衛施設庁との協議により、在日米軍司令部は移転候補地として水戸対地射爆撃場を回答。
1966年（昭和41年）10月10日 - アメリカ空軍太平洋地域地上電子技術設備局の査察官調査で大和田通信所の移転は必要なしとの結論。
1980年（昭和55年） - アメリカ軍がアンテナ18基（72本）を撤去。
1981年（昭和56年）6月30日 - ヘリポートを設置。
1983年（昭和58年）11月30日 - 日米合同委員会にて、アンテナ建設用地の使用条件変更に合意し、アンテナ工事を実施。
1992年（平成4年）4月 - アメリカ空軍の組織改編により、管理・使用部隊が変更。第475基地航空団解散により第374空輸航空団の管理下に置かれる。第1956通信群の解散により使用部隊が第374通信中隊となる。
2008年（平成20年） - アメリカ第5空軍374空輸航空団所属基地として運用中。

傍受実績

大和田通信所は、歴史的に重要な電信の傍受に成功しています。

1941年（昭和16年）12月8日 - 真珠湾攻撃の成功を伝える電信「トラ・トラ・トラ」を受信。「ポツダム宣言」も受信。
真珠湾攻撃開始の電信「ニイタカヤマノボレ1208」を送信した送信所は海軍無線電信所船橋送信所。
盧溝橋事件に関連し、軍事裁判時に証拠として提出された「停戦に反対する中国軍が攻撃する」という意味の英電文を1937年7月に受信。
サイパン島南に位置するテニアン島飛行場のB29爆撃隊の通信を傍受。広島原爆投下機「エノラゲイ」、長崎原爆投下機「ボックスカー」をテニアン飛行場付近の不審機として認識。
広島上空から打電された暗号通信から、「エノラゲイ」のコールサイン「5V625」とその機体がテニアン島離陸機であることを特定。原子爆弾搭載を認知していたかは不明。

脚注

現在、大和田通信所は在日米軍基地として運用されています。

関連項目

柏通信所
横田基地

外部リンク

基地に関するお知らせ - 新座市

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