大垂水峠

大垂水峠について

大垂水峠（おおたるみとうげ）は、東京都八王子市と神奈川県相模原市緑区の間に位置する峠であり、高尾山の南側にあります。国道20号がこの峠を通過しており、交通の要所となっています。

歴史

1869年（明治2年）の太政官布告により、甲州街道の小仏峠にあった小仏関所が廃止されました。その後、「東京から山梨に達する道路」は車両が通行可能な規格であることが求められたため、1888年（明治21年）に甲州街道のルートが小仏峠経由から現在の大垂水峠を通る道へと変更されました。この変更により、交通の利便性が大きく向上しました。

1885年（明治18年）には国道16号、1920年（大正9年）には国道8号に指定され、1952年（昭和27年）12月4日からは現在の国道20号として指定されています。また、1955年（昭和30年）頃には神奈川県側で大規模な経路変更が行われ、現在の姿になりました。

この峠は、「おおだるみとうげ」とも呼ばれることがありますが、国土交通省の公式資料では「おおたるみとうげ」とされています。

1935年（昭和10年）10月には、『横浜貿易新報』の読者投票により、県下名勝史蹟四十五佳選に選定され、その景観の美しさが評価されました。

峠名の由来

峠の名前の由来には、高尾山から西の城山、そして城山から南の大洞山を結ぶ稜線にある「大タルミ（弛み）」に位置することが挙げられています。この地形的な特徴が、峠の名前の由来となっています。

峠の現状

峠の区域内では、制限速度が30km/hまたは40km/hに設定されています。平日や夜間には、大型トラックやトレーラーが頻繁に通行し、交通の流れが滞ることがあります。特に、高速道路を通行できない超ロングトレーラーも通行するため、ヘアピンカーブが連続する区間や狭いコーナーでは、対向車線に大きくはみ出して走行するケースも見られます。

大垂水峠の東京側は勾配が急なため、30km/hで走行できない車両が多く見られます。その一方で、速度超過で取り締まりを受ける車両も存在します。

中央自動車道が開通する以前には、街道沿いに多くの商業施設が立ち並んでいましたが、徐々に衰退しました。1980年代まで存在していた2箇所のドライブインも、2017年現在ではすべて閉鎖されています。現在、東京側には少数の飲食店とラブホテルが点在する程度です。

暴走車両と通行規制

山梨方面に向かう道路の東京側には、トレーラーやトラックが一時的に停車して後続車を先行させることができる区間が2箇所あります。しかし、逆方向や神奈川側には退避帯となる区間が一切ありません。峠の全区間は「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」および「転回禁止」となっており、神奈川県側の区間ではさらに「駐停車禁止」の規制が設けられています。

神奈川県側のカーブが続く区間では、1980年代から1990年代にかけてローリング族と呼ばれる違法競走型暴走族による死亡事故が多発しました。漫画「バリバリ伝説」の影響もあり、状況はさらに悪化しました。これに対応するため、神奈川県警察は1987年に、相模原市緑区千木良1072先から相模原市緑区千木良179先（岡本バス停前から東京都境まで）の3.3km区間を、125cc以下の原動機付自転車の終日通行禁止としました。その後、オートバイブームの沈静化や、対向車線へのはみ出しを抑制するチャッターバーなどの施設が整備されたことにより、通行禁止の規制は土・日・祝日に変更されました。

2019年9月には、土・日・祝日の125cc以下の原動機付自転車の通行禁止規制が試験的に解除されました。その後、2020年9月時点では、標識柱などが撤去され、津久井警察署の「大垂水峠の交通規制」に関するページも削除されていることから、この通行規制は完全に解除されたと考えられます。

関連事項

日本の峠一覧
大弛峠（おおだるみとうげ） - 類似の名称を持つ峠
バリバリ伝説（第1部の舞台のモデルとなった）
魍魎の匣（バラバラ事件の現場として登場）

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