大型硬式飛行船

大型硬式飛行船の概要

大型硬式飛行船とは、大日本帝国海軍が計画した飛行船であり、実際に製造されたことはありません。この飛行船は、当時の航空機整備と補助艦艇の不足を補うために必要とされました。また、硬式飛行船は特に長距離飛行や偵察任務に活用されることを目的として設計されました。

背景

1930年に締結されたロンドン海軍軍縮条約がその背景です。この条約は軍艦の建造制限を含んでおり、海軍は新たな航空機を作ることでこれに対応しようとしました。また、1929年に訪れたLZ 127「グラーフ・ツェッペリン」の来日も、航空機開発の刺激となりました。

このような情勢において、1930年には「所要航空機種及性能標準」が策定され、硬式飛行船の必要性が高まっていきます。この標準では、航続時間150時間、最大速度148 km/h、さらに20挺の旋回機銃や10トン以上の爆弾を雇用できる点が求められ、また偵察機兼戦闘機を5機以上搭載することが期待されました。

計画の進行

その後、1931年頃から海軍技術研究所や広海軍工廠で、飛行船のガーダーやエンジン、燃料ガスの研究が始まります。1934年11月には、新たな要求として最大速度167 km/h、巡航111 km/h、航続距離18,520 kmという高い性能が提示されました。しかし、他国の飛行船における事故が相次ぎ、海軍は方針を変更し、飛行機を中心とする計画にシフトしました。これにより、硬式飛行船の計画は中止されることになります。

設計と仕様

大型硬式飛行船の設計は、既存の霞ヶ浦の飛行船格納庫を改修して使用することを前提に進められました。船体は鋼とジュラルミンの混合で作られ、特殊な管鋲を用いた結合部が新たに開発されました。浮揚ガスについては、ヘリウムの使用が検討されましたが、コストや調達の問題から水素を利用する計画に変更されました。

水素ガスの引火爆発を防ぐため、搭載機は船体内に格納せず、中央部の外部に設置された風防壁の間に吊下する形となります。この搭載機は「軽爆撃機」とだけ記されていますが、スケッチには九〇式艦上戦闘機に似た形状の機体が描かれていました。

その他の計画

この大型硬式飛行船の計画以前にも、1927年には別の大型硬式飛行船が設計された経緯がありますが、こちらは最終的に気嚢の一部の試作にとどまりました。

まとめ

大型硬式飛行船はその設計段階まで進んだものの、当時の航空技術と運用上の問題から実現には至りませんでした。未完成のまま消えたこの計画は、航空史において意義あるものであり、当時の技術力と海軍の意図が見えてくる重要な事例と言えるでしょう。

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