大塚直樹

大塚 直樹

1949年3月22日、東京都江戸川区に生まれる。日本のプロレス界でリングアナウンサーを務めた後、実業家としても活動した人物である。特に1980年代半ば、日本のプロレス界に大きな活気をもたらしたことで知られる。

黎明期から新日本プロレスへ

1971年、駒澤大学法学部法律学科を卒業。大学在学中の2年生の頃から、本多芸能スポーツサービスを通じて国際プロレスの営業部門でアルバイトを経験しており、この頃からプロレスとの関わりを持っていた。大学卒業後、一時トヨタ東京カローラに入社するが、知人の誘いを受けて1972年2月、アントニオ猪木率いる新日本プロレスに入社する。

新日本プロレスでは、まず初代リングアナウンサーとしてリングに登場し、約2年間その役割を務めた。その後、当時の新日本プロレスの要人であった新間寿の片腕として、主に営業畑で手腕を発揮し、営業部長の重責を担った。興行の成功に貢献し、団体の基盤強化に尽力した期間と言える。

クーデター事件とジャパンプロレス設立

1983年、新日本プロレス内部で勃発したいわゆる「クーデター事件」は、大塚直樹のキャリアにおける大きな転換点となる。この混乱を機に、同年12月、大塚は新日本プロレスを退社することを決断する。

退社後、大塚は新たなプロレス興行会社の設立に乗り出す。アントニオ猪木から直接名称の譲渡を受け、「新日本プロレス興行」として法人登記を行い、興行会社を設立した。そして、新日本プロレスから離脱した長州力や維新軍団の主要メンバーらを擁して、新たに「ジャパンプロレス」を旗揚げする。ジャパンプロレスは、当時の新日本プロレスとは異なる独自の路線を打ち出し、日本のプロレスマットに新たな風を巻き起こした。大塚はジャパンプロレスにおいて、代表取締役社長および代表取締役副会長を歴任し、団体の運営の中心を担った。

ジャパンプロレスは短期間ながら、新日本プロレスとの対抗戦などを通じて大きな話題を集め、特に1980年代中期のプロレスブームを牽引する重要な役割を果たした。大塚のプロデュース手腕や営業力は、この団体の成功に大きく貢献したと言われている。

現在の活動と著作

プロレス界の第一線からは身を引き、現在は株式会社タジマの代表取締役として実業家として活動している。プロレス界での経験を活かしつつ、新たな分野で経営者としての手腕を発揮している。

2019年5月27日には、著書『クーデター 80年代新日本プロレス秘史』（宝島社）を刊行した。この著書では、自身が新日本プロレス、そしてジャパンプロレスの設立と運営に関わった当事者としての立場から、当時の出来事、特に「クーデター事件」の詳細、初代タイガーマスクの電撃的な引退、アントニオ猪木の社長辞任、長州力らの大量離脱とジャパンプロレス旗揚げに至るまでの経緯など、プロレス史における重要な局面の裏側を、自身の日記に基づき「真実」として告白し、大きな反響を呼んだ。

また、家族との関わりも紹介されている。次女の夫は、かつてプロレスラーとして活動し、引退後に株式会社タジマに入社した伊藤旭彦氏である。伊藤氏は2014年より同社の取締役社長に就任しており、大塚の経営する会社の次代を担っている。

大塚直樹は、日本のプロレス史において、リングアナウンサーとしてキャリアをスタートさせ、営業手腕で団体を支え、そして歴史的な団体分裂と新たな団体の旗揚げという激動期に中心的な役割を果たした人物として、その功績が記憶されている。

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