大屋明啓

大屋明啓（おおや みつよし）は、生年は不詳ながら、江戸時代後期の旗本として活躍した人物です。幼名は右京、通称は図書と称し、官位は従五位下遠江守に叙せられました。

幕府においては、先手鉄砲頭という武官としての役職を務めた後、天保12年（1841年）8月10日から天保13年（1842年）9月30日まで火付盗賊改方という治安維持の重要な役目を担いました。火付盗賊改方は、江戸の治安維持に不可欠な役職であり、明啓はここで卓越した手腕を発揮したと推測されます。

その後、明啓は天保13年10月3日に佐渡奉行に任命され、同14年5月28日に佐渡の相川に着任しました。佐渡奉行は、佐渡金山の管理運営を担う重要な役職で、明啓は知行1150石、役料1500俵100人扶持という厚遇を受けています。佐渡奉行としての在任期間は比較的短かったものの、その間に金山の運営や地域行政に貢献したと考えられます。

弘化2年（1845年）4月には、小普請奉行という役職に移り、幕府の普請（土木工事）を担当しました。

嘉永元年（1848年）11月1日には、長崎奉行（第102代）という重要な役職に就任し、翌年の3月28日に長崎に着任しました。長崎奉行は、対外貿易を管轄するだけでなく、海外の情報収集も担う、幕府にとって非常に重要な役職でした。明啓は、着任後間もない同年6月には、長崎の地役人に対して学問に励むように命じ、人材育成にも意欲を見せました。これは、明啓が単なる行政官ではなく、将来を見据えた視野を持つ人物であったことを示唆しています。

しかし、明啓は長崎奉行在任中の嘉永3年5月21日に、長崎で病のため亡くなりました。享年は不詳です。その死は長崎で惜しまれ、喪が発せられたのは5月25日でした。彼の墓所は本蓮寺にあります。

大屋明啓は、幕府の要職を歴任し、それぞれの職務において優れた能力を発揮した人物でした。特に長崎奉行としては、在任期間は短かったものの、人材育成に力を入れるなど、その先見の明が伺えます。江戸時代後期の動乱期において、幕府を支えた重要な人物の一人と言えるでしょう。

参考文献
牧田利平編 『越佐人物誌』野島出版 昭和47年
外山幹夫著 『長崎奉行』中央公論社 昭和63年

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