火付盗賊改方

火付盗賊改方について

江戸時代における火付盗賊改方（ひつけとうぞくあらためかた）は、主に重罪である放火や盗賊を取り締まるために設立された役職です。元々は臨時の職務で、幕府の常備軍から選出された武官が中心とされ、普段は町奉行所の文官とは異なる立場に位置していました。火盗改とも略され、その役割は市民にとって重要ではありましたが、時に苛烈な取り締まりが行われたことも事実です。

設置の背景

火付盗賊改方が設立された背景には、明暦の大火が大きく影響しています。この大火以降、江戸には放火犯や武装した盗賊が多く出現しました。そのため、これらの悪党を取り締まるための専任機関が必要とされ、1665年に「盗賊改」が、1683年には「火付改」が設立されました。さらに、これらが1699年に一つにまとめられ、火付盗賊改方が形成されました。当初の町奉行は文官であったのに対し、火付盗賊改方は武官で構成され、この仕様が研ぎ澄まされた捜査と取り締まりを可能にしました。

役職の運営と組織

この役職の初代長官として知られるのが、中山勘解由（おにかんげゆ）です。彼の治下で、火付盗賊改方はその権限を広げていきましたが、初代火付改と盗賊改はその当時は別々の組織として運営されていました。火付盗賊改方は決まった役所がなく、既存の先手頭の役宅を利用して臨時の役所として機能しました。

組織は先手組の与力や同心によって構成され、そのメンバーは多くの場合、取り締まり経験が豊富でした。特に有名な長官である長谷川宣以は、作品『鬼平犯科帳』で主人公としても知られ、その人情味あふれる性格で市民に愛されていました。

責任と取り締まりの実態

火付盗賊改方は窃盗や放火に対する捜査権を有していましたが、裁定権は極めて限定的で、厳罰が伴う容疑者の処理には老中の承認を求める必要がありました。また、職務の特性上、暴力的な取り締まりが常態化しており、誤認逮捕や冤罪などが少なからず発生しました。その影響から、火付盗賊改方は市民からは嫌悪され、時代劇でも悪役として描かれることが一般的になりました。

組織の廃止と再設置

1699年に設立された盗賊改と火付改は、取り締まりの厳しさから廃止され、寺社奉行などの他の組織に統合されることになりました。しかし、赤穂事件を経て1733年には盗賊改が復活し、1718年には火付改も復活して「火付盗賊改」に統合されました。これにより、業務の効率化が図られ、1862年には専任責任者が設けられることになりました。

火付盗賊改方の歴史は、江戸時代の治安維持の一端を担っていた反面、その取り締まり方法や手法には多くの問題が残されたままであり、その運営の実態は今なお多くの研究が求められています。

参考文献

• - 釣洋一『江戸刑事人名事典』（新人物往来社、2006年）
• - 三田村鳶魚『捕物の話 鳶魚江戸文庫1』 中公文庫

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