大山 (神奈川県)

大山（おおやま）

神奈川県伊勢原市、秦野市、厚木市の境界に位置する標高1,252mの山、大山。
その美しい三角形の山容は、古くから人々の信仰を集め、丹沢の山々とともに丹沢大山国定公園の一部を成しています。日本三百名山や関東百名山にも選ばれ、県内有数の観光地として知られています。

大山の概要

大山は、丹沢表尾根の東端に位置し、その秀麗な姿から「相模富士」とも呼ばれてきました。古くから大山信仰の対象とされ、山頂には阿夫利神社の本社が祀られています。また、中腹には阿夫利神社下社と大山寺が建ち、山全体が神聖な場所として崇められてきました。大山は別名「阿夫利山」とも呼ばれ、雨乞いの神としても信仰を集めてきました。

大山信仰

江戸時代中期には、大山御師の布教活動により「大山講」が組織化され、庶民の間で大山参りが盛んになりました。各地から大山に通じる道が開かれ、麓には宿坊を備えた門前町が栄えました。また、大山では天狗信仰も盛んで、山頂には大天狗社、小天狗社が祀られていました。
民俗学研究家の知切光歳は、大山の天狗は日本の八天狗に数えられた大山伯耆坊であるという説を唱えていますが、国文学者の久留島元や妖怪研究家の毛利恵太らは、この説に疑問を呈しています。

大山の歴史

大山信仰の起源は不明ですが、縄文時代後期や古墳時代の遺物が発見されており、その歴史は古くから続いていたと考えられています。

古代

『万葉集』には大山を詠んだ歌が残されており、10世紀には「阿夫利神社」の記載があることから、古代から信仰の対象であったことが窺えます。
また、古代には不動明王を本尊とする大山寺が建立され、山岳信仰と仏教が一体化していきました。大山寺は、聖武天皇の勅願寺とされ、僧・良弁によって開かれたと伝えられています。

中世

鎌倉時代には、大山寺は鎌倉幕府の庇護を受けました。室町時代には、大山寺は地域領主層や勧進唱導活動で運営を支える宗教者集団の発言権が増していきました。戦国時代には、小田原北条氏の支配下に入りました。

江戸時代

江戸時代に入ると、徳川家康は大山の宗教勢力を統制し、真言宗以外の勢力を排除しました。大山寺は古義真言宗に統一され、徳川家光の時代には大規模な修繕が行われました。

明治時代以降

明治維新後、神仏分離令により大山寺は取り壊され、跡地に阿夫利神社下社が建立されました。その後、大山寺は現在地に再建され、大正時代に再び「大山寺」を称することになりました。

近年

近年では、登山者に人気の山として知られており、2023年には登頂回数ランキングで全国9位を記録しました。

大山の登山

大山には、いくつかの登山ルートがあり、最も一般的なのは伊勢原コースです。このコースは、ケーブルカーを利用して阿夫利神社下社まで行くことができ、そこから山頂までは約1時間半の道のりです。山頂からは、新宿の高層ビル群や房総半島まで見渡せる絶景が広がります。

主な登山ルート

伊勢原コース: 大山ケーブルバス停から阿夫利神社下社を経由して山頂へ
秦野コース: 蓑毛バス停から阿夫利神社下社を経由、またはヤビツ峠から山頂へ
本厚木コース: 広沢寺温泉バス停から日向薬師を経由して山頂へ

大山山頂周遊

ケーブルカーを利用して下社まで行き、登拝門から山頂、見晴台、二重滝などを巡る周遊ルートも人気があります。

女坂の七不思議

伊勢原コースの女坂には、弘法水、子育て地蔵、爪切地蔵、菩提樹、無明橋、潮音洞、眼形石という七不思議があります。

大山の観光

大山は、登山だけでなく、観光スポットとしても魅力的な場所です。

大山の門前町

大山ケーブル駅までの「こま参道」沿いには、宿坊の面影を残す旅館や豆腐料理店、民芸品店が軒を連ねます。また、大山名物の「大山まんじゅう」も人気です。

大山の滝

大山とその山麓には、信仰と関係の深い滝が多く存在します。

二重滝: 大山川の二段の滝で、雨乞いの滝として知られています。
八段滝: 階段状の岩盤を水が流れ落ちる景勝地ですが、現在は立ち入りが禁止されています。
門前町の滝: 大山の麓の5つの門前町には、それぞれ滝がありましたが、現在は一部水が枯れてしまった滝もあります。

イベント

毎年3月には、「大山とうふまつり」や「大山登山マラソン」が開催され、多くの観光客で賑わいます。

FMラジオ放送送信施設

2013年より、神奈川県内一部地域の難聴取解消のため、大山山頂付近にFMラジオ放送の送信施設が設置されています。

大山の風景

大山からは、富士山や相模湾などの絶景を見ることができます。また、四季折々の美しい風景も楽しめます。

大山を訪れる

大山へは、小田急小田原線伊勢原駅からバスを利用し、大山ケーブルバス停から「こま参道」を歩くことができます。
大山ケーブルカーを利用すると、より手軽に阿夫利神社下社まで行くことができます。

交通アクセス

電車: 小田急小田原線伊勢原駅下車、バスで大山ケーブルバス停へ
車: 新東名高速道路伊勢原大山ICよりアクセス可能

注意点

大山ケーブルバス停周辺の駐車場は小さいため、特に多客期は混雑が予想されます。
登山ルートは複数あるため、体力や経験に合わせて適切なルートを選択してください。
* 山頂のトイレは冬期閉鎖されるため、事前に確認してください。

大山は、歴史、信仰、自然、文化が調和した魅力的な山です。
ぜひ一度訪れて、その魅力を体感してみてください。

もう一度検索