大岡信賞

大岡信賞

大岡信賞（おおおかまことしょう）は、日本の著名な詩人であり文芸評論家でもあった大岡信氏（1931-2017）の功績を顕彰するために設けられた文学賞です。この賞は、「時代や社会を深く見つめ、それを貫く力強い「うた」を生み出すことで、芸術表現の新たな地平を切り拓いた個人あるいは団体」に対して授与されます。

創設の背景と主催

この賞は、2019年度にスタートしました。創設から2023年度までは、朝日新聞社と明治大学が共催していましたが、第6回となる2024年度からは朝日新聞社の単独開催へと移行しています。大岡信氏は、朝日新聞紙上で1979年から2007年にわたり長期連載されたコラム「折々のうた」を通じて、多くの読者に詩の魅力を伝えました。また、明治大学では約30年間、法学部教授として教壇に立つなど、両者とは深い関わりがありました。こうした縁が、大岡信賞創設の背景にあります。

選考と発表

大岡信賞の選考は、その年度の成果に対して行われ、例年、翌年の2月に選考会が開催され、受賞者が発表されます。選考委員は、多岐にわたる分野の専門家によって構成されており、現在の選考委員としては、池辺晋一郎氏、やなぎみわ氏、堀江敏幸氏、蜂飼耳氏、管啓次郎氏などが名を連ねています。創設当初の第1回には、作曲家の一柳慧氏も選考委員を務めていました。

贈呈式

受賞者への贈呈式は、第1回（2019年度）は明治大学のアカデミーホールで行われましたが、第2回以降は朝日新聞社の東京本社にて開催されています。

歴代受賞者

創設以来、様々な分野で「うた」の可能性を追求する個人が受賞しています。以下に、これまでの受賞者と対象作品の一部を示します。

第1回（2019年度）
佐々木幹郎（詩人）：詩集『鏡の上を走りながら』、オペラ「紫苑物語」台本
巻上公一（ミュージシャン）：詩集『至高の妄想』
第2回（2020年度）
岬多可子（詩人）：詩集『あかるい水になるように』
第3回（2021年度）
小島ゆかり（歌人）：歌集『雪麻呂』
第4回（2022年度）
野村喜和夫（詩人）：詩集『美しい人生』
第5回（2023年度）
荒川洋治（現代詩作家）：詩集『真珠：二人ずつ抱くと一人が余る』
第6回（2024年度）
* 新井高子（詩人）：詩集『おしらこさま綺聞』

このように、大岡信賞は、詩、歌、音楽、舞台芸術など、「うた」という広い概念のもと、既成のジャンルにとらわれず、新たな芸術表現を果敢に開拓する活動に光を当て続けています。大岡信氏が追求した言葉の力を現代に継承し、未来へとつなげる重要な役割を担う賞と言えるでしょう。

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