政事総裁職

政事総裁職（せいじそうさいしょく）

政事総裁職は、江戸幕府の三要職の一つとして江戸時代後期に設立された重要な役職です。特に幕末の時期において、将軍後見職や京都守護職と並ぶ意味を持っていました。これらの職は、幕府が対外的な危機に対処するために必要とされたもので、幕政の改革や新しい政治の流れを形成する際に重要な役割を果たしました。

沿革

幕末においては、アメリカのペリー提督の来航を契機に、対外的な緊張が高まる中、朝廷や諸大名から幕政への参加が強く求められるようになりました。特に、徳川宗家につながる親藩大名たちは、その地位を利用して幕政に変革をもたらすことへの期待が高まりました。これらの大名には、水戸徳川家の出身である一橋慶喜や、福井藩主の松平慶永が含まれていました。

文久2年（1862年）、朝廷は岩倉具視らの意見に基づき、幕府に対して一橋慶喜を将軍後見職に、松平慶永を大老職に任命するよう要求しました。この要求には大原重徳が勅使として江戸に赴き、薩摩藩の島津久光がその護衛として同行しました。幕府はこれに応じ、旧一橋派の諸侯を赦免し、松平慶永に政事総裁職を手渡しました。最初は大老職が提示されましたが、慶永が自分の家門の格式を理由に断ったため、急遽新設された政事総裁職に就任することになりました。

慶永は、参謀として横井小楠を迎え入れ、慶喜たちと共に幕政の改革を進めました。しかし、文久3年（1863年）には将軍徳川家茂の上洛工作の一環として京都に滞在中に、朝廷の強硬な対外意見と自身の意見の相違から苦悩し、3月2日に辞表を提出しましたが、この辞表は受け入れられないまま、彼は領国に帰国することになりました。この結果、幕府からは逼塞処分を受け、政事総裁職を解任されました。

次に政事総裁職に就いたのは、松平直克であり、彼は10月11日に就任しました。直克は参与会議や幕府の意見調整に関与し、参与会議の崩壊後は一緒に横浜の鎖港政策を進めましたが、天狗党の乱への対応をめぐって幕閣と対立し、1864年6月22日に辞職しました。

その後、この政事総裁職に就任した者はいなかったため、事実上、徳川家門のみがこの職に在職することになりました。松平直克が就任する前には、加賀藩の前田斉泰が幕閣から政事総裁職の打診を受けており、直克の辞職後には米沢藩の上杉斉憲や仙台藩の伊達慶邦が打診を受けるなど、外様大名からの任命も模索されていました。

関連項目

• - 幕末の四賢侯

このように、政事総裁職は幕末の動乱の中で重要な役割を果たし、政治体制の変革に寄与した職であると言えるでしょう。

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