大松博文

大松博文の生涯と業績

大松博文（1921年2月12日 - 1978年11月24日）は、日本のバレーボール界において卓越した指導者であり、政治家としても活動した。彼は香川県の宇多津町に生まれ、坂出商業学校を経て関西学院大学商学部に進学後、ニチボーに入社した。1941年に陸軍に召集され、中国やビルマ、ラバウルを転戦し、特にインパール作戦では悲惨な戦場を生き延びたこの経験は、後の彼の性格や指導スタイルに多大な影響を与えた。

バレーボール指導者としての歩み

1954年、大松はニチボー貝塚女子バレーボール部の監督に就任。彼の指導は厳しいスパルタ式トレーニングで知られ、「鬼の大松」と称されるほどであった。しかし、その厳しさが結果を出し、1960年の世界選手権では日本チームを歴史的な2位に導く。また、1962年にはソ連を破り第4回女子世界選手権で優勝し、大松は国民的英雄として認められた。

さらに、1964年の東京オリンピックでは全日本女子チームを率い、金メダルを獲得するという偉業を成し遂げた。この時、彼は守備重視の「回転レシーブ」という新たな戦法を考案し、選手たちに「俺についてこい！」という激励の言葉を送り続けた。これらの名言は後に著書として刊行され、映画化もされるほどの影響を与えた。

政治家としての活動

1964年末にニチボーを退社した後、1968年には自由民主党公認で参議院議員に立候補して当選。1974年の再選を目指した選挙では落選したが、その後はバレーボール界に戻り、指導活動に従事した他、イトーヨーカドーバレーボール部の創設にも関わり、技術顧問として貢献した。

功績と遺産

大松の指導法や理論には、彼が戦争で体験した極限の状況が色濃く反映されている。彼は「勝利唯一主義」という考え方を持ち、アマチュアリズムの理論を確立。勝利以外に目的がないとして、選手たちを鍛え上げた。その精神は多くの選手に受け継がれ、バレーボール界における彼の功績は永遠に記憶されることとなる。

1978年、岡山県井原市で指導中に心筋梗塞を起こし、わずか57歳で亡くなった。彼の戒名は「最勝院克堂博文居士」とし、死後に勲二等瑞宝章を追贈される。その成果を称えて、2000年にはアメリカのバレーボール殿堂にも入っている。また、香川県の宇多津町では「大松杯バレーボール大会」が開催され、彼の名声は今でも色あせることなく受け継がれている。大松博文の存在は、日本のバレーボールの発展に不可欠なものであり、今後も多くの人々にインスピレーションを与え続けるだろう。

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