大板山たたら製鉄遺跡

大板山たたら製鉄遺跡

大板山たたら製鉄遺跡は、山口県萩市に位置する江戸時代の製鉄所跡で、国の史跡およびユネスコの世界遺産にも登録されています。この遺跡は、江戸時代の中期から幕末にかけて、断続的に鉄を生産していた製鉄所の跡であり、日本の伝統的な製鉄方法であるたたら吹きを利用していました。

概要

大板山たたら製鉄遺跡は、大井川の支流である山の口川の上流部に位置し、砂鉄を原料に木炭を燃やして鉄を製造していました。特に、良質な砂鉄と木材が豊富な中国山地において、製鉄は古くから行われていました。この遺跡は、その中でも山口県で最大規模を誇り、長州藩に所属していた石見系のたたら遺跡の典型として評価されており、多くの遺構が良好に保存されています。

ここで生産された鉄は、西洋式の軍艦建造に利用されており、日本独自の技術が近代化に寄与した一例として注目されています。1981年に行われた調査により、遺跡の状況が明らかになりましたが、1984年に完成した山の口ダムによって、遺跡の南部は水没しました。しかし、北側には主要な遺構が残り、1988年に県指定の史跡となりました。その後、1990年から1996年にかけて発掘調査と保存整備が行われました。そして、2012年に国の史跡に指定された後、2015年には世界遺産に正式登録されました。

製鉄所の操業

大板山たたら製鉄所では、製鉄の操業が3回行われたとされています。宝暦期、文化・文政期、そして幕末期にそれぞれ異なる操業者によって運営されていました。特に幕末期に生まれた鉄は、長州藩初の西洋式軍艦「丙辰丸」の製造に使用されました。この鉄は、石見国浜田から北前船によって運ばれ、「鉄の道」と呼ばれる陸路を通じて運搬されたのです。

したがって、製鉄所の操業とその仕組みは非常に重要な歴史的実績を示しているといえます。

遺構

現在、残っている遺構は主に幕末期のもので、製鉄所は「山内（さんない）」と呼ばれており、柵で囲まれていたとされています。特に中心的な施設である高殿は、砂鉄を木炭で燃焼させて製鉄するための炉を備えた重要な建物です。高殿内には、砂鉄を洗浄するための設備や、人々が休息するためのスペースも設けられていました。

その他には、熱い鉄の塊を冷却するための「鉄池」や、作業や生活を支える補助的な建物が存在しました。さらに、長屋であった人足小屋は現在ダム湖に水没していますが、当時の職人たちの生活をうかがい知ることができます。

所在地とアクセス方法

大板山たたら製鉄遺跡は、山口県萩市大字紫福に位置しています。訪れる際のアクセスは、山口県道10号から山の口ダム方面へ向かう道が便利で、JR東萩駅から車で約30分、石見空港からは60分程度で到着できます。また、萩市の中心部からも車で約40分の距離にあります。

この遺跡は、日本の歴史を学ぶ貴重なスポットであり、製鉄技術の歴史に興味がある方にはぜひ訪れていただきたい場所です。

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