大森善清

大森善清：江戸時代の京都を彩った浮世絵師

大森善清は、江戸時代の京都で活躍した浮世絵師です。生没年は不明ですが、元禄15年（1702年）から正徳6年（1716年）にかけて、多くの絵本や浮世草子の挿絵制作に携わったことがわかっています。師系については明らかになっていませんが、同時代の京都の浮世絵師、西川祐信とほぼ同時期に活動していたと推測されています。

大森善清の画風は、当時、江戸で活躍していた著名な浮世絵師、鳥居清信や菱川師宣の影響を強く受けています。彼らの画技を巧みに取り入れながらも、独自の表現方法を確立し、多くの作品を生み出しました。

彼の作品は、主に版本挿絵として知られています。代表的な作品として、『しだれ柳』（元禄15年刊行）、『あやね竹』（元禄15年刊行）、『宇都山小蝶物語』（宝永3年刊行）、『新武者物語』（宝永6年刊行）、『新薄雪物語』（正徳6年刊行）などが挙げられます。これらの作品は、現在、国立国会図書館、ニューヨーク公立図書館、町田市立国際版画美術館、大阪府立大学、シカゴ美術館など、国内外の複数の美術館や図書館に所蔵され、高い評価を得ています。

初期には、無署名で本の挿絵を手がけていたと見られていましたが、近年の研究によって、20点以上の絵本の挿絵を描いていたことが判明しました。この発見により、大森善清の作品数は従来の認識を大きく超える規模であったことが明らかになり、その活躍ぶりは改めて注目を集めています。

大森善清の作品は、墨摺りの技法を用いた繊細な描写が特徴です。絵本の物語の世界観を巧みに表現し、登場人物の感情や情景を鮮やかに描き出しています。その高い芸術性から、現代においても多くの研究者や愛好家から注目され、江戸時代の浮世絵の歴史を語る上で欠かせない存在となっています。

彼の作品は、単なる挿絵としてだけでなく、当時の文化や社会を知る上で貴重な資料としても活用されています。例えば、『宇都山小蝶物語』は、当時の文学作品を知る上での重要な手がかりとなりますし、『新武者物語』は、武家社会の風習などを垣間見ることができる貴重な資料と言えるでしょう。

大森善清に関する情報は限られていますが、現存する作品や文献から、その画業の一端を垣間見ることができます。今後の研究によって、さらに多くの作品や詳細な経歴が明らかになる可能性があり、江戸時代の浮世絵史における大森善清の地位は、今後ますます高まることが期待されます。

参考文献

水谷不到　『古版小説挿画史』　大岡山書店、1935年
日本浮世絵協会編　『原色浮世絵大百科事典』（第2巻）　大修館書店、1982年
* 浅野秀剛 『菱川師宣と浮世絵の黎明』「第六節 京の絵師、大森善清」、東京大学出版会、2008年

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