大森氏頼

大森氏頼の生涯

大森氏頼（おおもり うじより）は、日本の室町時代から戦国時代にかけて活躍した武将で、扇谷上杉家の重臣としてその名を知られています。彼の生まれた年は不明ですが、父である頼春が応永29年（1422年）に出家したことから、氏頼はそれ以前に誕生したと考えられています。

当初、氏頼は兄の憲頼などと共に鎌倉公方・足利持氏に仕官し、永享の乱では持氏側で戦い、その才覚を発揮しました。持氏が敗れると、大森氏は衰退することなく、一定の勢力を保持し続けました。享徳の乱以降は、子の実頼と共に上杉方に属し、足利義政からの信任も受けて活躍していました。

彼の政治活動の中で、鎌倉公方との関係が深い大森氏と幕府との関係は常に安定しているわけではありませんでした。特に、兄の憲頼とその子成頼が古河公方の足利成氏を支持していることから、家族内での対立が見受けられました。

寛正5年（1464年）には、太田道灌の助けを借りて上洛し、義政の赦免を得ました。また、文明10年（1478年）には平塚城に籠った大森伊豆守（成頼とされる）の攻略に成功し、その結果、大森氏の再統一を果たし、当主としての地位を強化しました。小田原城に入城したのもこの頃とされ、以後は上杉定正に仕え、重臣として活躍しました。

小田原入城後、氏頼は城の拠点化を進め、相模国西部での支配権を確立しました。具体的には、嘉吉元年（1441年）に海蔵寺、文安2年（1445年）には総世寺を建立し、町場や職能集団の形成を図りました。また、著名な僧侶である玉隠とも親交を持ち、精神的な方面でも影響力を発揮しました。

しかし、太田道灌の暗殺後、氏頼は家中での重きを失わず、長享の乱では実蒔原の戦いや菅谷原の戦い、高見原の戦いにおいてもその名は高まりました。一方で、古河公方・足利成氏との和議を結ぶが、これをすぐに破棄するなど、政治的な判断が家臣の離反を引き起こす要因となりました。氏頼は扇谷上杉家の将来に対して不安を抱き、「大森教訓状」と呼ばれる手紙を定正に送ったとされます。

宗教面でも活動を行い、法華経に通じ、法名に「日昇」を持つなど日蓮宗との関係を築きました。さらに、曹洞宗の寺院を建立し、手厚く保護を施す一方で、箱根神社を中心とした古義真言宗や浄居寺の臨済宗とも関係を持ち、高い識見を持っていました。これらの宗教的知見は、彼の領地経営にも活かされています。

氏頼は後に嫡男の実頼に小田原城の城主の座を譲りましたが、その後彼自身は『寄栖庵』を名乗り、岩原城を防衛する役割を果たしました。彼は明応3年（1494年）に亡くなりましたが、その影響は後の世代にも伝承され続けています。実頼には先立たれていたため、家督は次男の藤頼が引き継ぎました。

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