大欽茂

大 欽茂（だい きんも）

大 欽茂は渤海の第3代王であり、その治世は8世紀における重要な時代背景の中で展開されました。彼は武王の三男として生まれ、仁安19年（737年）に王位を継承し、翌年には大興と改元しました。即位後、彼は唐から内侍を派遣され、渤海郡王として承認を得ました。この時期、彼の統治は文治政治に特徴づけられ、唐の制度を学びながら国内の組織を整えました。

統治制度の整備

文王として即位した大 欽茂は、唐の制度に倣い行政を整備しました。従来の部族制と郡県制が混在していた渤海の行政では、彼は中央集権的な統治体制の基盤を築くことに努めました。上京龍泉府を中心に府州を設け、三省六部の中央統治機構を整えることで、国家の統治を強化しました。780年代になると東京龍原府への遷都が実施され、五京制が確立されました。

この五京制の影響は渤海だけでなく、後の遼や金の時代にも見られ、渤海の発展に大きな役割を果たしました。

唐への帰順と文化交流

文王は、即位早々から唐への使節派遣を行い、彼の治世においては記録に残る限り50回以上も通貢が行われました。これは国内の安定を求めるだけでなく、先進的な文化や制度を学ぶためでもありました。以前の王たちの代でも留学生や漢籍の導入があったものの、文王の下ではその規模は飛躍的に拡大しました。多くの漢籍が渤海にもたらされ、貞恵公主墓碑や貞孝公主墓碑からは『尚書』や『詩経』などの典籍からの引用が確認されています。

日本との交流

大 欽茂の代において、渤海と日本の交流はさらに進展しました。十数回にわたり使節団が派遣され、使節の規模も拡大しました。当初は安史の乱に関する情報交換が主な目的でありましたが、やがて文化や経済の交流が重要な要素となっていきました。大興9年（746年）には渤海人が日本へ赴き、民間貿易を計画するなど、積極的な外交政策が展開されました。

安史の乱の影響

唐の安史の乱は、渤海にも影響を及ぼしました。この乱は平盧節度使の安禄山によるものであり、渤海都督府の上部機構にまで及ぶ叛乱でした。文王はこの事態を恐れ、国境に大軍を置き、日本との連携を強化しました。大興18年（755年）に安禄山の燕軍が唐の都を攻撃した際、渤海と唐の交通が途絶え、4年間にわたって貢納が途絶えました。

唐の当局は度々使者を渤海に送り、反乱鎮圧のための助力を求めましたが、文王は慎重に行動し、唐を支持する姿勢を貫きました。これは安史の乱平定後に文王が再度入朝したことからも窺えます。

子女

大 欽茂の子女には、長男の大宏臨が王に先立って亡くなり、次男の大貞斡は入唐の記録があります。他にも大英俊や大嵩璘などが存在し、彼の治世の歴史的背景を色濃く反映しています。

大 欽茂は、渤海の歴史に深い足跡を残した王であり、彼の育んだ国家制度や文化交流は、後の時代においても影響を及ぼしていくこととなります。

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