葉山三千子

葉山三千子：谷崎潤一郎と日本の映画界を繋ぐ女優

葉山三千子（はやま みちこ、1902年3月26日 - 1996年6月23日）は、日本のサイレント[[映画]]全盛期に活躍した女優です。群馬県前橋市に生まれ、本名は和嶋せい子。小説家谷崎潤一郎の妻・千代の妹という出自も注目に値します。谷崎潤一郎の代表作『痴人の愛』のヒロイン、ナオミのモデルとなった人物としても広く知られています。

1916年、姉の千代が谷崎潤一郎と結婚したことを機に、谷崎家に引き取られ、音楽学校に通うようになりました。しかし、彼女の道は音楽家ではなく女優へと続きます。

1920年、横浜の大正活映に入社し、『アマチュア倶楽部』で映画デビュー。この作品は、谷崎潤一郎が原作と脚本を担当したことで知られています。デビュー作の撮影後、江川宇礼雄と駆け落ちするという波乱万丈な人生の幕開けを飾ります。

その後、大正活映を退社し、帰山教正の映画芸術協会に参加。その後も、ヘンリー小谷映画社、松竹蒲田撮影所、マキノ等持院撮影所、帝国キネマ長瀬撮影所など、複数の映画会社を渡り歩き、数多くの作品に出演しました。出演作には、谷崎潤一郎原作の『本牧夜話』や、川端康成原作の『浅草紅団』など、名だたる作家作品への出演も含まれます。

1932年、大阪の神社で帝国酸素社員の和嶋彬夫と結婚しました。結婚後も女優業を続けましたが、徐々に表舞台から遠ざかり、晩年は神奈川県藤沢市鵠沼で暮らしました。

1996年6月23日、老衰のため94歳で死去しました。没後9日前には、画家の木下晋が彼女のポートレイトをデッサンしており、その作品は現在も個人蔵として大切に保管されています。

葉山三千子のフィルモグラフィーは、日本のサイレント[[映画]]史を語る上で重要な資料です。彼女のキャリアは、多くの映画会社を転々としただけでなく、谷崎潤一郎という文豪との繋がり、そして『痴人の愛』のモデルという事実は、彼女の人生と作品に独特の重みを与えています。

彼女の生涯は、日本の映画界と文学界が交錯する時代の証人として、現代においても色褪せることなく輝き続けています。彼女が残した足跡は、日本の映画史研究において、今後も重要なテーマであり続けるでしょう。 数々の作品を通して、時代を映し出した葉山三千子の存在は、日本の映画史に不可欠なものです。

主な出演作品:

アマチュア倶楽部 (1920年) 監督：トーマス・栗原、原作・脚本：谷崎潤一郎
雛祭の夜 (1921年) 監督：栗原喜三郎、原作・脚本：谷崎潤一郎
出帆前怪指紋 (1921年) 監督：栗原喜三郎
喜撰法師 (1921年) 監督：栗原喜三郎
煙草屋の娘 (1921年) 監督：トーマス・栗原
濁流 (1921年) 監督：帰山教正
神代の冒険 (1922年) 監督・脚本：帰山教正
続アマチュア倶楽部 (1923年) 監督：トーマス・栗原
自活する女 (1923年) 監督：島津保次郎
お転婆娘 (1923年) 監督：小沢得二
幸福への道 (1924年) 監督：井上麗三
本牧夜話 (1924年) 監督：鈴木謙作、原作：谷崎潤一郎
友愛結婚 (1930年) 監督：豊田四郎
浅草紅団 (1930年) 監督：高見貞衛、原作：川端康成
春遠からず (1931年) 監督：曾根純三

参考文献:

『つれなかりせばなかなかに』瀬戸口寂聴（1997年、中央公論社）

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