大理国

雲南に花開いた王国、大理国の興亡

937年、白蛮出身の段思平が南詔を滅ぼし、大理国を建国しました。現在の雲南省を主な領土とし、独自の文化と政治体制を築き上げました。しかし、大理国の政治構造は完全に集権化されたわけではなく、君主の権力は絶対的なものではなかったと考えられています。

大理国は、段氏が代々君主の座を継承しました。歴代皇帝たちは「皇帝」の称号を用いて統治していましたが、国内における称号と、対外的な称号を使い分けることもありました。例えば、後大理国時代の1117年には、北宋から「雲南節度使大理国王」の称号を贈られています。これは、大理国が中国の王朝との複雑な関係性を維持していたことを示す一例と言えるでしょう。

11世紀末、1094年に高昇泰という人物が段氏を廃し、自ら皇帝に即位、国号を大中、元号を上治と改めました。しかし、この高氏の支配は短命に終わり、2年後の1096年に高昇泰が崩御すると、彼の遺言により、息子である高泰明は政権を段氏に返還しました。この高氏による中断後の大理国は、「後大理国」と呼ばれるようになります。

後大理国時代には、段氏による統治が再開されましたが、13世紀半ば、モンゴル帝国の勢力が雲南地方にまで及ぶと、大理国はモンゴルの支配下に置かれることとなります。1253年、モンゴル軍の大理遠征により、翌年には大理国は降伏しました。モンゴル帝国第5代皇帝クビライ・カアンは、この地を自身の庶子であるフゲチに与え、雲南王国（後に梁王国と改称）を成立させました。

興味深いことに、大理国の旧支配者であった段氏一族は、フゲチとその子孫に仕えることで生き延び、雲南王国における支配階級の一員として地位を保ち続けました。彼らは梁王家に娘を嫁がせるなど、巧みな外交戦略によって権勢を維持しました。「大理総管」という地位を与えられ、雲南地方における影響力を維持し続けたのです。

しかし、大理国の歴史はここで終わるわけではありませんでした。1380年代、明が梁王国を滅ぼすと、段氏一族は、明に服属することで大理国の再興を企図しました。しかし、明の洪武帝は、大理国の旧領内にあった、当時東アジアでも有数の銀山に強い関心を抱いており、段氏による大理国の再興を認めませんでした。結果的に、大理国は明に併合され、雲南全土は、長きに渡って中原の支配から隔絶されていた歴史に終止符を打たれることになったのです。

大理国の首都は、その名も大理でした。大理石の名前の由来にもなっているこの都市は、大理国の政治・経済の中心地として繁栄し、独自の文化を育みました。大理国は、その短い歴史の中で、独自の政治体制、文化、そして複雑な国際関係を築き上げた、魅力的な歴史を持つ国でした。その興亡の歴史は、東アジアの歴史における重要な一章を飾っています。

歴代の君主

前大理 (938年 - 1094年)

太祖聖神文武帝 段思平
文経帝 段思英
聖慈文武帝 段思良
広慈帝 段思聡
応道帝 段素順
昭明帝 段素英
宣粛帝 段素廉
秉義帝 段素隆
聖徳帝 段素真
天明帝 段素興
孝徳帝 段思廉
上徳帝 段廉義
上明帝 段寿輝
保定帝 段正明

大中 (1094年 - 1096年)

富有聖徳表正帝 高昇泰

後大理 (1096年 - 1253年)

中宗文安帝 段正淳
憲宗宣仁帝 段正厳
景宗正康帝 段正興
宣宗功極帝 段智興
英宗亨天帝 段智廉
神宗永恵帝 段智祥
孝義帝 段祥興
* 天定賢王 段興智

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