大田黒重五郎

大田黒重五郎

大田黒重五郎（おおたぐろ じゅうごろう、1866年7月26日 - 1944年7月28日）は、江戸時代末期に生まれ、明治・大正・昭和の激動期を生き抜いた実業家です。彼は、芝浦製作所（現在の東芝）の経営再建に大きく貢献し、その後、各地で水力電気事業を発展させました。また、文豪・二葉亭四迷との親交も深く、彼の作品にも影響を与えた人物として知られています。

生い立ちと教育

大田黒重五郎は、1866年（慶応2年）、徳川幕府の御家人である小牧辰蔵の四男として、江戸小石川（現在の東京都文京区）に誕生しました。しかし、幕府の崩壊に伴い、一家は静岡へ移住し、彼は幼少期に没落士族としての苦労を経験します。その後、沼津の旧制中学校を卒業後、上京し、東京大学の前身である大学予備門を受験しますが、失敗。しかし、彼は諦めず、東京外国語学校（現在の東京外国語大学）露語科に進学し、そこで生涯の友となる二葉亭四迷と出会いました。その後、東京外国語学校が東京商業学校と合併したため、東京高等商業学校（現在の一橋大学）を卒業。その後、大田黒惟信の養子となり、大田黒姓を名乗るようになりました。

実業家としての活躍

1894年、大田黒重五郎は三井物産に入社し、実業家としてのキャリアをスタートさせます。1899年からは、経営が悪化していた芝浦製作所の再建に尽力し、1904年には同社の専務取締役に就任。卓越した経営手腕を発揮し、芝浦製作所を立て直しました。その後、彼は電力事業の将来性に着目し、1906年に箱根水力電気（後の横浜共同電灯）を設立。これを皮切りに、九州水力電気や四国水力電気など、各地で水力電気会社を設立し、日本の電力インフラ整備に大きく貢献しました。また、九州電気軌道の社長も務めるなど、多岐にわたる分野で活躍しました。

二葉亭四迷との関係

大田黒重五郎は、東京外国語学校時代からの親友である二葉亭四迷との交流を生涯大切にしました。二葉亭四迷は、大田黒をモデルとして、自身の代表作である小説『浮雲』を執筆したとされています。二人の間には深い友情があり、互いに影響を与え合ったことが窺えます。

晩年と家族

1936年、大田黒重五郎は自らの口述による自伝『思ひ出を語る』を出版しました。この自伝は、彼の波乱に満ちた人生と、彼が成し遂げた偉業を後世に伝える貴重な資料となっています。長男の大田黒元雄は、音楽評論家として活躍しました。

まとめ

大田黒重五郎は、実業家として、そして人間として、多くの人々から尊敬を集めた人物です。彼の功績は、日本の近代化に大きく貢献し、その名は後世に語り継がれるでしょう。



参考文献
『日本の実業家―近代日本を創った経済人伝記目録』（日外アソシエーツ、2003年）
大野虎雄『沼津兵学校附属小学校』　　　　　　　　（安川書店、1983年）

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