大矢透

大矢透（おおや とおる）

大矢透（1851年1月4日 - 1928年3月16日）は、日本の国語学者であり、仮名の歴史的変遷や上代日本語の音韻を研究したことで知られています。特に『隋唐音図』において、反切に基づいた漢字の音読み（漢音部分）を網羅的に比定した業績は高く評価されています。

人物

大矢透は、越後国蒲原郡根岸村（現在の新潟県新潟市）に生まれました。幼名は又七郎といい、蔦廼舎水斎という号を用いていました。戊辰戦争には新発田藩の兵として従軍した経験を持ちます。1875年に新潟師範学校を卒業後、山梨県師範学校、茨城県師範学校、茨城第二中学校で教鞭を執り、教育者としてのキャリアを積みました。その後、1886年からは文部省に勤務し、国語教育の分野で活躍しました。1899年から1901年には台湾総督府民政部の職員として台湾に赴任しています。

1909年には文部省国語調査委員会の委員に任命され、国語に関する調査・研究に携わりました。1916年には、その研究業績が認められ、帝国学士院賞恩賜賞を受賞しました。1919年、森鷗外のすすめにより奈良に移住し、研究に専念する日々を送りました。1925年には、「仮名乃研究」によって京都帝国大学から文学博士の学位を授与されています。墓所は雑司ヶ谷霊園にあります。

業績

大矢透は、日本の国語史、特に仮名文字の変遷や上代日本語の音韻に関する研究において、重要な貢献をしました。『隋唐音図』における漢字音の比定は、当時の音韻研究の水準を高めるものでした。

著書

『語格指南』 (1880年)
『尋常小学書簡文稽古本』 (1886年)
『わづかのこらへ』 (1891年)
『日清字音鑑』 (1894年)
『国語溯原』 (1899年)
『東文易解』 (1902年)
『日本文典課本』 (1905年)
『現行普通文法改定案調査報告 第1』 (1906年)
『仮名遣及仮名字体沿革史料』 (1909年)
『仮名源流考』 (1911年)
『周代古音考』 (1914年)
『音図及手習詞歌考』 (1918年)
『地蔵十輪経 元慶点』 (1920年)
『願経四分律古点』 (1922年)
『成實論』 (1922年)
『韻鏡考』 (1924年)
『隋唐音図』 (1932年)
『仮名の研究』 (1933年)
『仮名遣及仮名字体沿革史料』 (1969年)
『韻鏡考・隋唐音図』 (1978年)
『仮名遣及仮名字体沿革史料』 (2005年)

参考資料

デジタル版日本人名大辞典
「大矢透」『近代文学研究叢書 第28巻』昭和女子大学近代文学研究所 (1968年)
大矢博士自伝

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