大笹吉雄

大笹 吉雄：日本の演劇界の先駆者

大笹 吉雄（おおざさ よしお、1941年5月8日生まれ）は、日本の著名な演劇評論家であり、演劇史の研究や著作を通じて日本の演劇界に大きな影響を与えてきました。彼は主に新派や新劇、そして歌舞伎と現代演劇の交差点に位置する作品を中心に評論を展開しています。

来歴と教育

大阪府で生まれた大笹は、早稲田大学の第一文学部演劇科で学び、郡司正勝に師事しました。1964年に大学を卒業した後、演劇出版社で歌舞伎雑誌『演劇界』の発行に関わりましたが、1975年には演劇批評の道に進むためにその職を離れました。彼の演劇批評家としてのキャリアは思わぬ形でスタートし、最初の原稿依頼までに6か月の空白があったそうです。37歳で初の著書『正統なる頽廃』を発表し、その後の活動の礎を築きました。

受賞歴と業績

1985年、彼はライフワークである『日本現代演劇史』の執筆を開始し、この作品でサントリー学芸賞を受賞しました。さらには、1991年に『花顔の人・花柳章太郎伝』で大佛次郎賞、2008年には『女優二代』で読売文学賞、2010年には『新日本現代演劇史』で河竹賞、2014年に『最後の岸田國士論』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞するなど、日本の演劇批評界での存在感を高めていきました。

また、1998年から2008年まで大阪芸術大学の教授を務め、演劇界の次世代の育成にも貢献しました。彼はサントリー学芸賞の選考委員や、朝日舞台芸術賞選考委員としても活躍し、国際演劇評論家協会の日本センター会長に就任していた時期もあります。

批評のアプローチ

大笹は、初めは「アングラ」演劇を対象とする批評を行っていましたが、1980年代中頃からは新派や新劇といったジャンルに注目し、それらをいやが上にも評価し始めました。2022年には、昭和後期（1966年～1989年）の新劇の歴史をまとめた『日本新劇全史』を刊行し、演劇史の理解をさらに深める作品を提供しました。

著作一覧

彼の著作は非常に多岐にわたりますが、以下に主なものを挙げます：

• - 『正統なる頽廃』（1978年、河出書房新社）
• - 『同時代演劇と劇作家たち』（1980年、劇書房）
• - 『ドラマの精神史』（1983年、新水社）
• - 『日本現代演劇史』シリーズ（1985年～2001年）
• - 『花顔の人 花柳章太郎伝』（1991年、講談社）
• - 『女優二代 鈴木光枝と佐々木愛』（2007年、集英社）
• - 『日本新劇全史』シリーズ（2017年～2022年、白水社）

これらの著作は、日本の演劇を理解する上で不可欠な資料となっています。物語と表現の背後にある文化や歴史を探る彼の視点は、今も多くの人々に影響を与え続けています。大笹吉雄の業績は、演劇批評の枠を超えて、芸術全体における深い理解を提供しています。

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