大統領令 (アメリカ合衆国)

大統領令とは

大統領令（だいとうりょうれい）は、アメリカ合衆国大統領が、アメリカ合衆国議会の承認を得ずに、連邦政府やアメリカ軍に対して発する行政命令・行政委任立法です。これはアメリカ合衆国憲法で明確に規定されているわけではなく、1789年以降、行政官が任務を遂行するための命令として発せられてきました。

日本語では、「大統領令」という言葉が、executive order（行政命令）とpresidential memorandum（大統領覚書）の両方を指す場合と、executive order（行政命令）のみを指す場合があります。この記事では、両方を包括する意味で「大統領令」を使用します。

大統領令の種類

アメリカ合衆国連邦政府には、以下のような様々な種類の大統領命令が存在します。

大統領命令 (Presidential directive)：最も広義の「大統領命令」であり、大統領が発するすべての命令を含みます。
大統領令 (Executive order)：連邦政府の運営を管理するための命令。
大統領布告 (Presidential proclamation)：状況を説明し、法令を宣言し、その遵守を求め、出来事を認知し、あるいは法令に明記されている状況の現実化を認知することで法令の実施を発動する布告。
大統領覚書 (Presidential memorandum)：連邦行政府の諸省庁の行動・実務・政策などを管理・統治するための覚書。
大統領決定 (Presidential Determination)：連邦行政府の公的な政策や立場となる、ホワイトハウスが発する決定。
大統領認定通告 (Presidential finding)：議会（その委員会を含む）に対し、特定の事態が発生したことを認定・通告する文書。
国家安全保障命令 (National security directive)：国家安全保障会議に対する命令。

これらの大統領命令は、大統領の権限を行使する上で重要な役割を果たしています。

連邦議会との関係

大統領令は、連邦議会が制定した法律に基づく委任立法として発せられることがあります。しかし、連邦議会は立法を通じて大統領令を上書きし、無効化または廃止することも可能です。このように、大統領令は連邦議会の立法権による制約を受けます。

連邦最高裁との関係

さらに、連邦最高裁判所は、司法権と違憲審査権を行使して、大統領令を無効化することができます。過去には、連邦最高裁による違憲判決によって無効化された大統領令が複数存在します。例えば、ハリー・S・トルーマン大統領が朝鮮戦争時に発令した、オハイオ州の製鉄工場を強制接収する『大統領令10340号』は、連邦最高裁によって違憲と判断されました。

大統領令の歴史

大統領令には1907年から番号が振られるようになり、エイブラハム・リンカーン大統領が1862年に発した『奴隷解放令』まで遡って番号が付与されました。

日本において有名な大統領令としては、太平洋戦争時に日系アメリカ人を強制収容する根拠となった、フランクリン・ルーズベルト大統領による1942年2月19日の『大統領令9066号』が挙げられます。フランクリン・ルーズベルト大統領は、歴代で最多となる3721本もの大統領令を発令しました。

毎年ホワイトハウスで行われる感謝祭の前日に行われる七面鳥恩赦式では、料理のために用意された七面鳥を放免する儀式がありますが、2014年にバラク・オバマ大統領はこの恩赦の命令を「executive order」と表現しました。

大統領令は、アメリカ政治において大統領の権限を示す重要なツールであり、その発令と運用は、常に連邦議会や最高裁との間で緊張関係を生み出しています。

関連項目

勅令: 君主国・立憲君主国における同種のもの
政令: 日本における同種のもので内閣が発する

外部リンク

Executive Orders Issued by President George W. Bush
Archive of US Executive Orders
What is an Executive Order?
* Searchable Archive of Over 3,600 Executive Orders at The American Presidency Project

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