大谷ダム (新潟県)

大谷ダムについて

大谷ダムは、新潟県三条市、一級河川である信濃川水系の五十嵐川上流部に建設された県営ダムです。かつては五十嵐川ダムと呼ばれていました。このダムは、高さ75.5メートルのロックフィルダムであり、五十嵐川の治水と三条市への上水道供給を主な目的として、国庫の補助を受けて建設された補助多目的ダムです。ダムの直下で合流する笠堀川には笠堀ダムがあり、両ダムは連携して五十嵐川流域の治水・利水に貢献しています。

ダムによって形成された人造湖は、旧下田村の村花であったヒメサユリにちなみ、「ひめさゆり湖」と命名されました。なお、島根県松江市にも同名のダムが存在します。

地理

五十嵐川は、大河津分水路分流点より下流の信濃川水系における主要な支流です。烏帽子岳を源流とし、概ね北北西に流れていきます。上流部では笠堀川と合流し、その後、奇岩で知られる八木ヶ鼻地点で守門川を合わせます。さらに蒲原平野へと流れ出て、大平川や鹿熊川と合流した後、三条市の中心部を貫くように流れ、信濃川に合流して日本海へと注ぎます。五十嵐川の流路延長は38.7キロメートル、流域面積は337.3平方キロメートルで、流域全体が三条市内に含まれます。大谷ダムは、笠堀川との合流点からすぐ上流に建設されています。ダム建設当時の所在地は南蒲原郡下田村でしたが、平成の大合併により周辺町村とともに三条市に編入されました。

五十嵐川の読み方は「いがらしがわ」ではなく、「いからしがわ」と濁らないのが特徴です。大谷ダムへは、県内各地から国道289号を利用してアクセスできます。ただし、ダムから約2キロ先は行き止まりとなっており、現在、福島県境の八十里越をトンネルで貫き、只見町と結ぶ工事が進められています。

沿革

三条市の中心部を流れる五十嵐川流域は、古くから水害が頻発する地域でした。戦後、人口増加に伴い、治水対策と水道供給の必要性が高まりました。新潟県は、洪水調節と上水道の供給を目的に、1964年（昭和39年）に五十嵐川の右支川である笠堀川に笠堀ダムを建設しました。しかし、その後も人口増加と水害被害が続いたため、五十嵐川本川にダムを建設する計画が立ち上がりました。

大谷ダムの建設は1971年（昭和46年）に計画が開始され、当初は「五十嵐川ダム」として工事が進められました。22年の歳月をかけて1993年（平成5年）に完成しましたが、湛水時に地元からの要望により、水没地区である大谷集落の名を冠して「大谷ダム」と改称されました。同時に、ダム湖も旧下田村の村花であるヒメサユリにちなんで「ひめさゆり湖」と命名されました。大谷ダムは、中央土質遮水壁型ロックフィルダムであり、高さは75.5メートルです。洪水調節、不特定利水、そして三条市への上水道供給を目的としています。

新潟豪雨とダムの役割

2004年（平成16年）7月、新潟県内は過去最悪の集中豪雨に見舞われました。この豪雨は平成16年7月新潟・福島豪雨（7.13水害）とも呼ばれ、五十嵐川や刈谷田川が氾濫し、三条市や見附市などの流域市町村で14,300戸が浸水するなどの甚大な被害が発生しました。この時、大谷ダムの上流部では、1時間最大雨量73ミリ、24時間最大雨量450ミリ（県設置の雨量計記録）という観測開始以来最大の降雨量を記録しました。

計画治水容量を大幅に超える水量（最大584.80m3/s）がダム湖に流入し、ダム本体に大きな影響を与える可能性がありましたが、笠堀ダムとともに大谷ダムは限界洪水調節容量まで貯水を行い、下流への放水量を抑制しました。新潟県の試算によると、もしダムがなかった場合、三条市などでの家屋浸水被害はさらに2,000戸増加していたとされています。このことから、大谷ダムが洪水調節に大きな役割を果たしたことは明らかです。しかしながら、一部の住民からは、現状を十分に理解しないまま「ダムは役に立たなかった」という批判が寄せられたことも事実です。

参考文献

建設省河川局監修・全国河川総合開発促進期成同盟会編　「日本の多目的ダム　補助編」：山海堂。1980年
建設省河川局監修・財団法人ダム技術センター　「日本の多目的ダム　補助編」：山海堂。1990年

関連項目

ダム
日本のダム－日本の人造湖一覧
ロックフィルダム
多目的ダム－日本の多目的ダム一覧
都道府県営ダム
笠堀ダム
平成16年7月新潟・福島豪雨
三条市
中部地方のダム一覧

外部リンク

大谷ダム - ダム便覧
新潟県三条地域振興局 地域整備部
大谷ダム
* ダム横断図（新潟県河川防災情報システム）

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