大辻 伺郎の生涯と影響
大辻伺郎(おおつじ しろう)は、
1935年に東京で生まれ、日本の
映画界で独特な存在感を放つ
俳優として知られています。彼は本名を大辻寿雄といい、父親の大辻司郎もまた、弁士で
漫談家として活躍しました。大辻は1952年に父を喪い、その悲劇的な出来事が彼の人生の軌道を大きく変えることになります。高校を休学し、柳橋の
料亭で
板前として働く傍ら、
俳優を志すようになります。
早稲田大学文学部演劇科に入学し、劇団に参加したものの、演技の道を本格的に追求するために早々に中退しました。その後、伊志井寛という演技の師にみっちりと稽古を受け、経験を積んでいきます。
新派での小さな役から工夫を凝らして演技力を磨き、徐々に名声を得て、1960年には
市川崑に見出されて
大映に入社。彼の活躍は
テレビドラマや
映画に広がっていき、特に脇役や準主役として圧倒的な存在感を示しました。
彼の演技は多彩で、抽象的な役から具体的なキャラクターまで、実に幅広く演じ分けることができたため、「怪優」との異名を持つに至りました。
1963年には
テレビドラマ『赤いダイヤ』で、相場師を熱演し、その名を広めました。また、多くの
映画に出演し、特に
大映や
東映の作品ではその演技で観客の心を掴みました。
しかし、大辻の華やかなキャリアの裏には、晩年の苦しい状況も隠れていました。
1972年には
ベストドレッサー賞を受賞する一方、翌年には自殺という選択をせざるを得なかったのです。彼の自殺の前日には、自動車事故を起こし、深刻なトラブルに直面していました。そして、自殺当日は『
非情のライセンス』の撮影が予定されていましたが、彼はホテルオークラでその生涯を終えることになります。周囲の人々は、彼が抱えていた借金や仕事の行き詰まりが影響したのではないかと推測しています。
大辻の性格は激しく、共演者やスタッフとのトラブルも多かったと言われています。彼の強い個性が周囲との摩擦を生む原因となっており、それが仕事の減少に繋がったとも考えられています。このような背景から、大辻は次第に心的な負担を感じるようになり、自らの未来に絶望を感じた可能性も否定できません。
未亡人となった
愛人の女性は、彼の最期の様子を不審に思い急いでホテルに駆けつけたものの、彼はすでに亡くなっていました。彼の最後の作品は、『夫婦日記』というドラマであり、その翌週に放送された影響力のあるエピソードでした。大辻の死が引き金となって、演劇界では彼を偲ぶ会が開催され、共演者や友人たちが彼の才覚を惜しみました。
大辻伺郎は、数多くの
映画やドラマに出演し、その才能で多くの人々を魅了しました。彼の死後も、作品は語り継がれ、彼の在りし日の姿が今でも多くのファンに愛されています。彼の複雑な人生と華やかなキャリアは、演劇界に大きな影響を与えたことは間違いありません。