大野町 (愛知県八名郡)

大野町（おおのちょう）

かつて愛知県八名郡に存在した自治体、大野町は、現在の愛知県新城市の一部にあたります。豊川の支流である宇連川の左岸に位置し、古くから交通の要衝として栄えた歴史を持つ町でした。

沿革

大野町の前身は、江戸時代を通じて幕府領であった大野村です。明治維新後、1889年（明治22年）10月1日、町村制施行により周辺6村と合併し改めて大野村として発足しましたが、翌1890年（明治23年）10月20日には旧村域に分立し、大野村は再び旧来の範囲に縮小しました。1892年（明治25年）4月18日、この大野村が町制を施行し、大野町となりました。町域はその後変わらず推移しましたが、昭和の大合併期、1956年（昭和31年）4月1日、大野町は七郷村、南設楽郡の長篠村、鳳来寺村と合併し、新設された鳳来町の一部となり、自治体としての大野町は消滅しました。旧町域は鳳来町の大字「大野」として引き継がれ、2005年（平成17年）10月1日に鳳来町が新城市に編入された際に、新城市の大字「大野」となりました。

地理

宇連川の左岸に位置しており、町の西端を宇連川が流れていました。対岸は当時、北設楽郡に属した長篠村の一部（現在の新城市富栄）でした。南はかつて舟着村と、北は七郷村の井代地区と接していました。また、町内で宇連川に合流する阿寺川や真立川沿いには、周辺の村落へ通じる道がありました。

経済と文化

大野町は古くから交通の要衝でした。鳳来寺と秋葉山本宮秋葉神社を結ぶ秋葉街道と、豊橋と別所を結ぶ別所街道がここで交差しており、宿場町として栄えました。江戸時代からのこの役割に加え、明治時代には養蚕業が発展し、その集散地としても賑わいました。さらに、経済的な中心地としての地位を確立したのが、1896年（明治29年）に設立された大野銀行です。これは東三河地域で初めての民間金融機関であり、現在の三菱東京UFJ銀行へと連なる金融機関の一つです。大野町はこれを背景に、東三河の金融の中心地としても発展しました。
現在も、往時の宿場町や商業地としての面影を残す古い町並みが保存されています。特に、旧大野銀行の本店として使われていた建物は、「大野宿鳳来館」として活用されており、歴史的な空間を生かした喫茶店兼ギャラリーとして利用されています。

教育

町内には独自の教育機関が存在しました。小学校は、1873年（明治6年）に開校した町立大野小学校がありました。この学校は1976年（昭和51年）に周辺校と統合されて鳳来町立東陽小学校となり、現在は新城市立東陽小学校として続いています。中学校に関しては、1947年（昭和22年）に大野町立大野中学校として開校した後、1949年（昭和24年）に隣接する七郷村の中学校を統合し、大野町・七郷村組合立東陽中学校となりました。この中学校は、1972年（昭和47年）に鳳来町内の学校再編により、鳳来中学校に統合され廃校となっています。

電気事業

大野町では、1938年（昭和13年）頃まで、町内資本による電気供給事業が行われていました。1912年（明治45年）に製材業者が事業を開始し、1919年（大正8年）には大野電気株式会社がこれを引き継ぎました。大野電気は町外へも送電網を広げましたが、1938年に大野電気が中央電力に統合されたことで、町内事業者による電気事業はその歴史を閉じました。

娯楽施設

町内にはかつて、劇場や映画館として地域住民に親しまれた「春日座」がありました。

現在の旧大野町地域には、2016年（平成28年）3月時点で約400世帯、約1,200人が居住しています。

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