大阪市交通局30000系電車

大阪市交通局30000系電車

大阪市交通局30000系電車は、2009年から大阪市営地下鉄に導入された通勤形電車です。2018年の大阪市交通局民営化に伴い、製造された車両はOsaka Metroに引き継がれました。

形式は30000系ですが、御堂筋線仕様は31系、谷町線・中央線仕様は32系とも呼ばれます。本稿では、2022年7月に中央線で運行を開始した30000A系についても解説します。

概要

谷町線の老朽化した30系を置き換えるため、2008年から導入が始まりました。開発は大阪オリンピック誘致計画の頃に始まり、2006年に開発許可が降りました。新20系を基本とし、80系などの技術を取り入れ、さらに発展させています。

谷町線への新型車両投入は22系以来19年ぶりで、2013年10月までに13編成が導入されました。これにより、大阪市営地下鉄の営業車両は全て電機子チョッパ制御、VVVFインバータ制御、回生ブレーキを装備し、省エネ車両率100%を達成しました。

2011年からは10系置き換えのため御堂筋線にも導入されました。御堂筋線への新型車投入は21系以来20年ぶりです。2022年6月には御堂筋線向けの最終編成が導入され、同線向けの30000系は全22編成となりました。

大阪市営地下鉄の地下鉄車両としては、大阪市交通局時代に導入された最後の新形式車両です（大阪市交通局全体としては、ニュートラムの200系が最後です）。Osaka Metro継承後も増備が続けられています。価格は6両1編成で約8億9千万円（1両あたり約1億4,830万円）ですが、入札ごとに価格が低下しています。

車両概説

ここでは共通事項を説明し、谷町線と御堂筋線独自の仕様は後述します。

車体

車体は軽量ステンレス構造で、レーザー溶接によるビードレス外板です。前頭部は従来の切り妻形から丸みを帯びた形状に変更されています。灯具類は前照灯と尾灯が前面上部の左右両脇に配置され、窓下にはラインカラー帯があります。

行先表示器はLED式を本格採用しました。谷町線向け第1編成では3色LEDでしたが、その後フルカラーLEDに変更されました。側面は全て3色LEDです。車体にはラインカラー帯のほか、号車番号が大きく記されています。

内装・機器類

台車はインダイレクトマウント・モノリンク式台車で、23系で試験的に使用されたものをベースにしたDS-300形台車です。

冷房装置は20系より薄型で能力が向上したものが1両につき2基搭載され、中央に少し寄せて設置されています。天井の段差が解消され、天井高さも上がっています。座席下の暖房装置も薄型になり、床面積を拡大しています。

谷町線向け第1編成では、大阪市交通局の車両として初めて床材で台車点検蓋を隠し、フラットな床面を実現しました。

補助電源装置は、第3軌条方式の5路線では初のSIVを搭載しています。

車内には、大阪市交通局の車両として初めて液晶ディスプレイ（LCD）による車内案内表示装置が設置され、次駅案内や多言語（日本語・英語・中国語・韓国語）での運行案内が表示されます。

谷町線仕様車（32系）

前面下部は直線形状で、内装パネルは白系の柄入りです。カーテンは準備工事のみで、カーテンレールのみが設置されています。車内案内表示装置は4:3の画面幅で、独自のデザインが採用されています。

2009年度・2010年度投入分（32602F - 32604F）

試作車である32601Fのデータを反映し、一部仕様を変更した量産車です。2009年度末に32602F、2010年度に32603F、32604Fの計18両が投入されました。

• - 前面行先表示器をフルカラーLED化
• - 床材で隠されていた台車点検蓋を露出化
• - 扉開閉予告灯の位置を左上部から中央上部へ変更
• - 開扉時の盲動鈴鳴動機能を追加（32604Fのみ）
• - 量産車投入に伴い、試作車32601Fも改造

2011年度投入分 (32605F - 32607F）

32605F - 32607Fの計18両が投入されました。御堂筋線向け編成とは異なり、従来の仕様を維持しつつ、内装や盲動鈴が改良されました。

• - 運転席日よけの変更
• - 袖仕切りの横棒の色変更
• - 扉横の手すりの拡大
• - カーテンレールをフリーストップ式に変更
• - 内装パネルの貼り付け面積の拡大
• - 盲動鈴の鳴動間隔の変更

これらの変更は、御堂筋線向けの31601Fにも反映されています。

2012年度・2013年度投入分（32608F - 32613F）

2012年度に32608F - 32610F、2013年度に32611F - 32613Fの計36両が投入されました。御堂筋線向け31601Fの一部仕様変更を反映し、安全設備が改良されました。

• - 扉付近に枕木方向へのつり革を新設し、つり革の本数を増加
• - 袖仕切の横棒を2段化

これらの変更は、2013年度の御堂筋線向け量産車にも反映されています。

御堂筋線仕様車（31系）

前面のカラーリングは曲線状で、赤色のラインが太くなり、上部に白色のラインが追加されています。近畿車輛と川崎重工業の2社で製造されており、扉窓ガラスの周囲の段差部分の塗装に違いがあります。

内装パネルにはイチョウと銀杏の柄が採用され、親しみやすい空間が演出されています。座席配置を工夫し、乗降口横のスペースを拡大し、大きな荷物を持つ利用客にも利用しやすくしています。座席は形状が改良され、モケットの色は赤色、優先座席は青色です。フリーストップ式カーテンが取り付けられ、荷棚高さが40ミリ下げられています。

車内案内表示器は16:9の画面幅で、駅名表示はアニメーション表示をします。ホーム案内も進行方向から向かうように表示されます。

2013年度・2014年度御堂筋線投入分 (31602F・31603F)

2013年度に31602F、2014年度に31603Fが投入されました。谷町線向け編成での変更点を反映し、さらに改良が施されました。

• - 運転室と客室の間の扉の窓ガラスを下方向に拡大
• - 乗降口横のスペース拡大箇所に案内ステッカーを追加
• - 車内照明をLED化
• - プラズマクラスター発生装置を一部車両に設置
• - 量産車投入に伴い、31601Fも改造

2016年度・2017年度御堂筋線投入分 (31604F - 31609F)

2016年度に31604F、2017年度に31605F - 31609Fが投入されました。車内デザインを「都会のイメージの中に未来に向けて新たな風を盛り込んだデザイン」に一新しました。

• - 車内化粧板の色やデザインを変更
• - 床敷物にイチョウのデザインを採用
• - 女性専用車両の配色を変更
• - 吊り手の配置や高さの見直し、握り棒の増設、袖仕切の大型化
• - サーカディアンリズムに対応した車内照明制御機能を追加
• - 車内案内表示器（御堂筋ビジョン）を大型化
• - プラズマクラスター発生装置を全車両に設置
• - 新幹線グリーン車の座席構造を応用したロングシートの採用
• - 足元照明を設置
• - 制御装置の仕様変更
• - 前照灯をLED化
• - 貫通扉の窓を角ばった形状に変更

31607F以降は、大阪市交通局の民営化を考慮し、車体の「大阪市高速鉄道」マークが省略され、後にOsaka Metroロゴが貼付されました。

2018年度投入分以降 (31610F - 31622F)

民営化後の新造車です。2018年度に31610Fと31611F、2019年度に31612F〜31614F、2020年度以降に31615F以降が投入されました。2022年6月に31622Fが導入され、10系と10A系の置き換えが完了し、御堂筋線向け車両の製造は終了しました。

• - 31610Fの1号車に防犯カメラを試行設置
• - 側面LED表示機の行先表示に駅番号を表示
• - 車両間の貫通扉のガラス面積を大型化
• - マスコンをワンハンドル化
• - 啓発広告枠の撤去
• - プラズマクラスターのデザイン変更
• - 袖仕切りのデザイン変更
• - 31612Fでは貫通扉の化粧板の色をベージュから白に変更、製造年の表記を西暦に変更

中央線仕様車（30000A系）

2022年7月22日に運行を開始した30000A系は、2025年大阪・関西万博の輸送力増強用です。万博終了後は谷町線に転用される予定で、塗装も谷町線カラーに変更されます。30000A系は、既存の20系・24系を置き換えます。形式は谷町線30000系に合わせており、車両番号の千の位は2、十の位は5から始まっています。

基本構造は御堂筋線30000系に準じていますが、路線カラーのスパークルドットを散りばめたデザインを採用しています。内装にもスパークルドットが多用され、床面の主電動機点検蓋（トラップドア）は廃止されています。座席は谷町線及び御堂筋線初期仕様で、新幹線グリーン車を応用した構造ではありません。

主要機器も御堂筋線30000系に準じますが、台車はボルスタレス式に変更され、電動台車がSS-190M、付随台車がSS-190T（メトロ形式WS-300）となっています。

編成

監督官庁への届出上の車両形式は、千の位が「0」となっています。

運用

30000系

谷町線仕様は2008年10月に導入が発表され、試運転を経て2009年3月18日から営業運転を開始しました。御堂筋線仕様は2011年4月25日に導入が発表され、試運転を経て12月10日に営業運転を開始しました。

30000A系

中央線仕様の第1編成は2022年3月に竣工し、試運転を経て2022年7月22日に営業運転を開始しました。2023年1月までに10編成が製造されました。

脚注

注釈

出典

参考文献

• - 『KS World 2009－近畿車輌技報 vol.16－』「新製品紹介/30000系地下鉄電車」 (PDF) （インターネットアーカイブ）

外部リンク

• - 大阪市交通局殿向け 新型30000系車両 2009年春デビュー! 近畿車輛（製造メーカー）による紹介
• - New Product 30000系地下鉄電車 - 近畿車輛
• - 日本地下鉄協会『SUBWAY』
• - 2009年3月号レポート2「大阪市交通局地下鉄谷町線30000系試作車」 (PDF) （pp.31 - 37掲載）
• - 2023年8月号車両紹介「大阪市高速電気軌道株式会社中央線400系及び30000A系の概要」 (PDF) （pp.44 - 47掲載）
• - 新たな30000系車両が完成！ - YouTube（大阪市交通局公式）

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