大阪航空堺市墜落事故

2007年 10月27日、大阪府堺市で発生したヘリコプター墜落事故は、航空業界における安全管理の重要性を改めて浮き彫りにしました。この事故では、大阪航空株式会社が所有するロビンソン式R22 Beta型ヘリコプターが、南海電鉄高野線の線路上に墜落し、機長と同乗者の2名が犠牲となりました。

事故の概要

事故機は、体験飛行と称して無資格の同乗者を搭乗させていました。事故当日、ヘリコプターは八尾空港を離陸後、堺市上空で突風に遭遇。この際、同乗者が操縦を行ったため、機長による適切な回復操作が遅れ、機体は制御不能に陥りました。その結果、ヘリコプターは線路上に墜落し、大破・炎上。南海高野線は約6時間にわたり運休を余儀なくされました。

事故の詳細

飛行計画と経過

事故機は、1日に5回、1回あたり約15分の体験飛行を計画していました。事故が発生したのは、4回目の飛行中でした。この際、機長は左席、同乗者は右席に着座していました。飛行計画は、八尾空港を出発し、大阪周辺を飛行後、八尾空港に戻るというものでした。しかし、実際にはレーダー記録によると、機体は不規則な進路をとり、高度と速度を大きく変動させていました。

事故当時の気象状況

事故当日は、強風注意報が発令されており、特に事故発生時間帯には、西からの突風が吹いていたと複数の目撃者が証言しています。八尾空港の観測データでも、風速8ktの風が吹いており、突風や乱流が発生しやすい状況でした。また、事故発生時には台風20号が紀伊半島沖を北東に進んでおり、気象状況は不安定でした。

機体の状況と損害

墜落したヘリコプターは、機体が大破し、胴体の破断、メインローターブレードの破損、尾翼の脱落など、深刻な損傷を受けていました。また、墜落現場である南海高野線の電線も切断され、電柱の一部が損傷しました。

乗組員の情報

機長は40歳の男性で、事業用操縦士の資格を持っていましたが、操縦教官ではありませんでした。総飛行時間は807時間、同型式機による飛行時間は218時間でした。また、機長は過去にサルコイドーシスという持病を患っていましたが、専門医の診断では航空業務に影響はないとされていました。解剖の結果、機長と同乗者からアルコールや薬物は検出されませんでした。

事故原因

事故調査報告書によると、事故の原因は、以下の2点に集約されます。

1. 無資格者による操縦: 体験飛行と称し、操縦資格のない同乗者に操縦をさせていたことが、事故の直接的な原因となりました。特に、突風に遭遇した際に、同乗者が不適切な操縦を行ったため、機体の回復操作が遅れ、制御不能に陥りました。
2. 安全管理体制の不備: 大阪航空は、体験飛行に関する規定が曖昧で、操縦練習許可書の取得や安全教育が不十分でした。また、事故機は航空機使用事業として許可は取得していたものの、航空運送事業の許可は取得していなかったことも問題点として指摘されています。

マスト・バンピング

事故のメカニズムとしては、突風によってマスト・バンピングが発生し、メインローターブレードがテールコーンを叩き、回転が低下。これにより機体が制御不能に陥り、墜落に至ったと考えられています。

事故後の対応

事故後、大阪航空は、国土交通省の指導を受け、以下の改善策を実施しました。

体験飛行の見直し：体験飛行は、操縦練習許可書を取得した操縦訓練の一環として実施する。
無資格者の搭乗制限：無資格者は左席に座らせ、左席の操縦桿を取り外す。
安全ブリーフィングの徹底：飛行前に、機長が同乗者へ安全ブリーフィングを実施する。
安全管理体制の強化：安全推進組織を見直し、安全管理者を配置し、法令遵守を徹底する。

また、国土交通省は、全日本航空事業連合会に対し、ロビンソン式ヘリコプターの操縦士に対する訓練の徹底と、体験飛行における安全確保について、会員への周知を要請しました。

刑事処分

大阪航空の社長と幹部は、航空法違反と業務上過失致死の疑いで書類送検されましたが、乗客が操縦していた証拠がないことなどから、不起訴処分となりました。

まとめ

大阪航空堺市墜落事故は、安易な体験飛行の危険性と、航空業界における安全管理体制の重要性を改めて浮き彫りにした事故でした。この事故を教訓に、二度とこのような悲劇が繰り返されないよう、航空業界全体で安全意識の向上と、再発防止に向けた取り組みを徹底していく必要があります。

もう一度検索