大隈綾子

大隈綾子：大隈重信を支えた賢妻

大隈綾子（1850年11月28日 - 1923年4月28日）は、大隈重信の二番目の妻として、明治という激動の時代を共に歩みました。彼女は、夫を内助の功で支え、その賢妻ぶりは広く知られています。旧幕臣の娘としての出自を持ちながらも、時代の変化に柔軟に対応し、大隈家の繁栄に大きく貢献しました。

生い立ちと結婚

綾子は、旗本の家に生まれましたが、幼少期に両親を亡くし、母方の伯父である小栗忠高のもとで育ちました。明治維新後、小栗家が困窮すると、茶屋奉公をしていた時期もあったと言われています。その後、最初の結婚を経験しますが、すぐに離縁。20歳の時に、大隈重信と再婚しました。

大隈重信を支えた半生

結婚後、綾子は常に重信に寄り添い、その活動を支え続けました。彼女は、物静かで控えめな性格でしたが、度量が大きく、几帳面で、義侠心に富んでいました。また、負けず嫌いな一面も持ち合わせており、大隈家を陰ながら支える存在でした。早稲田一帯の土地を購入したのも綾子の独断だったと言われています。

綾子は、社交にも熱心で、大小さまざまな園遊会を頻繁に開催し、多くの人々をもてなしました。大隈邸は「世界の客間」と呼ばれるほど、国内外からの賓客で賑わいました。明治十四年の政変で重信が免官となり経済的に困窮した際には、節約と土地の売却によって家計を支えました。重信が襲撃され負傷した際も、毅然とした態度で彼を支え続けました。

社会活動への参加

綾子は、社会活動にも積極的に参加しました。仏教系の婦人団体である夫人正法会の発起人となり、機関誌『法の母』の刊行を支援しました。また、愛国婦人会の設立にも尽力し、女性の地位向上に貢献しました。

晩年

重信が政界を引退すると、再び経済的に苦しい時期を迎えましたが、周囲の支援を受けながら生活を続けました。重信の死後、綾子は彼の前妻の娘である熊子と同居し、穏やかな晩年を過ごしました。1923年、72歳でその生涯を閉じました。

人物像

綾子は、控えめながらも芯の強い女性でした。彼女は、刺繍を趣味とし、作ったものを人々に贈ることを好みました。また、慈悲深く、貧しい人々に施しを与え続けました。一方で、非常に几帳面で潔癖症であり、常に家の中を清潔に保っていました。鹿鳴館の夜会にも和服姿で参加し、日本の伝統文化を重んじる姿勢を示しました。

銅像問題

大正天皇即位の大典を記念して、綾子の袴姿の銅像を早稲田大学に建立する計画が持ち上がりましたが、一部の教授グループの反対運動により、大隈庭園内に設置されることになりました。この問題は、早稲田騒動へと発展する一因となりました。

Legacy

大隈綾子は、大隈重信の妻としてだけでなく、一人の女性として、激動の時代を生き抜きました。彼女の賢明さ、度量、そして社会貢献への熱意は、今もなお多くの人々に感銘を与え続けています。早稲田大学には、彼女の功績を称え、朝倉文夫によって制作された銅像が設置されています。

綾子の生涯は、テレビドラマ「あさが来た」や「青天を衝け」などでも描かれ、多くの人々に知られています。彼女は、日本の近代史における重要な女性の一人として、その名を永遠に刻んでいます。

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