大韓国民党

大韓国民党：李承晩大統領支持基盤の韓国政党

大韓国民党は、大韓民国建国直後、1940年代後半に存在した政党です。初代大統領である李承晩氏の強力な支持基盤として誕生し、韓国政治史において重要な役割を果たしました。本稿では、その成立から衰退までの経緯、政策、そして選挙における動向を詳しく見ていきます。

誕生と党勢拡大：大統領支持と憲法改正阻止

大韓国民党の起源は、李承晩大統領を支持する勢力である国民会に遡ります。1948年12月の創設後、当初はいくつかのグループが離脱するなど、政党としての基盤固めには苦戦しました。しかし、その後、新政会、大韓労農党、一民倶楽部といった与党系の政治勢力や議員を糾合し、李承晩大統領が提唱した「一民主義」を掲げ、1949年11月12日に正式に発足しました。

尹致暎氏と李仁氏が最高委員に就任した大韓国民党は、当時国会で多数派を占めていた野党・民主国民党が推進する憲法改正（大統領中心制から内閣責任制への移行）を阻止することを主要な目標としました。この戦略が功を奏し、第6回国会において71議席を獲得、院内第1党の地位を確立しました。これは、李承晩大統領の強い支持と、憲法改正阻止という明確な目標を掲げたことによる成果と言えるでしょう。

選挙での敗北と衰退：朝鮮戦争の影

しかし、大韓国民党の勢力は長くは続きませんでした。1950年5月、朝鮮戦争直前に実施された第2代国会議員選挙では、全210議席中24議席という惨敗を喫しました。この敗北は、朝鮮戦争の勃発という予期せぬ事態と、国民の支持基盤の脆弱さを露呈した結果と言えるでしょう。戦争によって政治情勢が大きく変化した中、大韓国民党は勢力を失い、その後の韓国政治においては、大きな影響力を持つことはありませんでした。

党の政策：民族主義と国民福祉

大韓国民党は、その政策において民族主義と国民福祉を重視していました。具体的な政策目標としては、以下の3点が挙げられます。

1. 民族完成統一と自主独立の国家伸張: 階級、地域、性別を超越した統一国家の実現と、自主独立による国家発展を目指しました。これは、建国直後の韓国が抱えていた内外問題への対応を反映した政策と言えるでしょう。
2. 国民均等の福利増進: 政治、経済、教育など、あらゆる分野において国民の福祉向上を図ることを目指しました。これは、貧富の格差や地域格差の是正を図るための政策であったと考えられます。
3. 世界平和と世界文化への貢献: 民族の正義と文化を継承発展させ、世界平和と世界文化に貢献することを目指しました。これは、韓国が国際社会の一員として果たすべき役割を認識した上での政策目標であったと考えられます。

結び：短命に終わった政党、しかしその歴史的意義

大韓国民党は、その存在期間は短かったものの、韓国建国期の政治状況を理解する上で重要な役割を担った政党です。李承晩大統領という強力な指導者を支持基盤とし、憲法改正阻止や国民福祉向上といった明確な政策目標を掲げたことで、一時的にではあるものの、国会における支配的な勢力となりました。しかし、朝鮮戦争という大きな歴史的変動の前に、その勢力は急速に衰えました。大韓国民党の歴史を考察することで、建国期の韓国政治における複雑な力関係や、政治勢力の興亡を理解する上で貴重な知見が得られると言えるでしょう。

参考文献

金浩鎮編著『韓国政治の研究』李権雨訳（三一書房）
韓国精神文化研究院編『韓国民族文化大百科事典 6』
大韓民國會事務処編『國會史』大韓民国國會事務処
中央選挙管理委員会編『大韓民國政黨史　第1輯（1945～1972）』

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