大鷹鳥谷山

大鷹鳥谷山（おおたかどややま）は、福島県田村市都路町古道と双葉郡川内村大字下川内との境界にそびえる、標高794メートルの山です。阿武隈高地の一部を形成しており、その山頂付近には、おおたかどや山標準電波送信所が設置されています。

この山の歴史を語る上で欠かせないのが、かつて存在したデッカ航法のための送信所です。昭和後期、海上保安庁が管理する「川内デッカ局」がこの地に設けられました。高さ150メートル級の送信アンテナを備え、1976年3月30日に運用を開始したこの局は、金成（宮城県）を主局とする東北デッカチェーンの従局の一つとして、種市（岩手県）と粟島（新潟県）と共に重要な役割を担っていました。

デッカ航法は、電波を利用して船舶や航空機の位置を特定するシステムでしたが、ロランCやGPSといったより高度な航法システムの登場と普及により、利用の伸び悩みが生じました。その結果、海上保安庁が運用していた東北、関東、北陸、四国の4つのデッカチェーンは、1993年6月30日に廃止されることとなりました。

しかし、この地の電波送信施設としての役割は終わらず、川内デッカ局の跡地には、おおたかどや山標準電波送信所が新たに建設されました。1999年6月10日に運用が開始されたこの送信所は、日本全国に正確な時刻情報を伝える重要な施設です。

この地が標準電波送信所に選ばれた背景には、電気工学者の加島篤氏の研究が大きく関わっています。加島氏によると、デッカ局の所在地は、標高が高く見晴らしが良いことに加え、道路や電線、電話回線などのインフラが整備されているという点で、JJY送信所（標準電波送信所）にも非常に適していました。さらに、デッカ運用時に得られた電波伝搬特性に関するデータも、JJY送信所の設計と運用に役立ったとされています。

同様の理由から、北九州デッカチェーンの前原デッカ局跡地には、はがね山標準電波送信所が建設されています。これらの事例からも、かつてのデッカ局の遺産が、現代の社会インフラに貢献していることがわかります。

大鷹鳥谷山は、その静かな姿の裏で、時代の移り変わりと共に航法技術の発展を見守り、現在も人々の生活を支える重要な役割を担っているのです。この山を訪れる際には、その歴史と現代における意義を感じていただければ幸いです。

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