天体位置表

天体位置表概要

天体位置表（てんたいいちひょう）は、海上保安庁海洋情報部によって編纂された、日本の航海用の精密な視天体暦です。この資料は、主に航海における天体観測（いわゆる天測）を通じて自船の位置を特定するために利用されました。1942年から2009年までの長い間、毎年発行されていましたが、2010年に廃刊となりました。最終版は、信頼性の問題から1年間保管された後に廃棄されています。代わりとなる冊子は日本国内には存在していないため、その重要性が再認識されています。

沿革

天体位置表の創刊前の歴史は、天文学的データの入手が困難になった時期と深く結びついています。1904年に日露戦争が勃発し、その影響で外国からの天体暦の輸入が難しくなりました。続く1911年には、複数の国（イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、スペイン）が天体暦の推算に関する協定を結びましたが、第一次世界大戦の勃発（1914年）によってもさらに状況は厳しくなりました。

1942年12月30日、天体位置表は初版が発行されました。この創刊は、太平洋戦争の勃発に伴い、外国からの天体暦の入手が不可能になるという事態に対処するために行われました。さらに、アーネスト・ウィリアム・ブラウンの『Tables of the Motion of the Moon』が利用されていましたが、その信頼性に疑問が持たれていたため、日本独自での推算が必要とされました。

1943年と1944年には、初めての昭和版が続々と発行され、その後も1959年からは英暦の数値を採用することになりますが、1979年から日本での推算が復活し、1984年版からは一般相対性理論に基づく新しい技術が取り入れられました。最終的に2009年版をもって廃刊されることとなりました。

内容

天体位置表には、以下のような情報が盛り込まれています：

• - 1時間ごとの月の視位置
• - 太陽、月、太陽系の惑星に関する赤経・赤緯・地心距離
• - 恒星の平均位置
• - 日食・月食情報
• - 日本で観測可能な天体の食の情報
• - 太陽と月の出没時刻（太陽は10日間隔、月は毎日）

これらの情報は、航海の支援を目的としているため、衛星や物理観測に関するデータは含まれていません。航海士たちが信頼できる情報源としてこの表を用い、正確な位置を特定するために大いに貢献しました。

結論

天体位置表は、日本の航海や天体観測の歴史において重要な役割を果たした資料です。技術の進歩とともに変化し続けたその内容は、当時の航海士たちにとって不可欠なツールでありましたが、今ではその情報が散逸しつつあります。国立天文台では、現在この冊子を管理していないため、その希少性や重要性が再評価されています。

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