天使女子短期大学

天使女子短期大学は、かつて北海道札幌市東区に本部を置いていた日本の私立短期大学です。学校法人天使学園を設置主体とし、1950年に国内で最初に認可された短期大学149校の一つとして誕生しました。当初は1学科体制でしたが、その後の拡充を経て複数の学科と専攻科を擁するようになります。しかし、短期大学としての役割を終えることになり、1999年度の入学生を最後に学生募集を停止し、2004年 1月30日をもって正式に廃止されました。

建学の精神と学風

本短期大学は、1877年にフランスで創立されたマリアの宣教者フランシスコ修道会を母体としていました。この背景から、キリスト教の思想に基づいた教育が実践されており、「愛をとおして真理へ」という学是が掲げられていました。教育全体にわたって、カトリックの精神が深く根差していた点が大きな特色です。

教育と学び

教育の中心を担っていたのは、衛生看護学科と食物栄養学科の二つの学科でした。それぞれ看護学と食物栄養学の分野において、高度な専門知識と実践的な技術の習得を目指す教育が行われていました。特に、隣接する天使病院と連携し、学生が現場で学ぶ実習機会が豊富に提供されていたことは、実践力の育成において重要な役割を果たしました。キリスト教系の学校であるため、教育課程には宗教学の科目も組み込まれていました。

取得可能な資格

各学科の課程を修了することで、食物栄養学科では栄養士、衛生看護学科では看護師の受験資格が得られました。また、設置されていた専攻科（衛生看護学専攻）では、保健師や助産師の受験資格取得を目指すことも可能でした。教職課程も設けられており、中学校教諭二種免許状（家庭、保健）や養護教諭二種免許状を取得する道も開かれていました。かつては高等学校教諭免許状の取得課程も存在しました。

沿革

天使女子短期大学の歴史は、その前身である専門学校に始まります。1947年に札幌天使女子厚生専門学校が、1949年には天使女子栄養学院が創設されました。同年10月には短期大学の設置認可申請が行われ、厚生学科（入学定員40名）の設置が計画されました。1950年 3月14日に文部省より設置が認可され、同年4月1日に天使厚生短期大学として開学します。1951年には学校法人が成立し、1952年には栄養科（入学定員50名）が増設されました。1953年には天使女子短期大学へと名称が改められ、体制が整えられていきました。1965年には専攻科（厚生専攻）が設置され、さらなる専門教育の場が設けられます。学科名の変更も行われ、1969年には厚生科が衛生看護学科に、それに伴い専攻科厚生専攻が衛生看護学専攻に改称。1971年には栄養学科が食物栄養学科に改められました。定員変更などを経て、教育活動が続けられましたが、1999年度の入学生を最後に短期大学としての学生募集を停止。そして2004年 1月30日、半世紀以上にわたる歴史に幕を下ろしました。

キャンパスと施設

キャンパスは札幌市東区北13条東3に位置していました。校舎や体育館などの設備は時代に合わせて増改築が行われ、教育環境の充実に力が入れられました。特に、創立40周年を迎えた1987年にはチャペルが設置され、キリスト教教育の拠点としての役割も担いました。校門前に立つプラタナスの木は、1940年に外国人シスターによって植えられたもので、幾度かの移植を経ながらもキャンパスの歴史を見守り続けた象徴的な存在でした。学生寮はありませんでした。

学生生活

短期大学では、学習面だけでなく、学生生活も豊かなものとなるよう様々な活動が行われていました。体育系のバレーボール、バドミントン、テニス、バスケットボールや、文化系の手話、華道、茶道、美術、箏曲、合唱、ボランティア、菓子研究など、多岐にわたるクラブ活動・サークル活動が展開されていました。学園祭は「天使祭」と呼ばれ、日頃の学習成果やクラブ活動の成果を発表する場として賑わいました。

大学の象徴

天使女子短期大学のカレッジマークには、その教育理念や背景が象徴的に込められていました。十字架はイエス・キリストの愛を、中央の「M」は母体であるマリアの宣教者フランシスコ修道会の礎となるマリアを、ロープは理性と意志の力を、海は人生における目的地へ向かう道のりを、星は道標としての聖母マリアを、そして船は学び舎で成長する学生や大学そのものを表していました。これらの要素が組み合わされ、建学の精神が視覚的に表現されていました。

社会との関わりと卒業生の進路

地域社会との連携として、1990年度からは公開講座を開設し、学びの機会を提供していました。卒業生の多くは、それぞれの専門分野で活躍しましたが、特に衛生看護学科の卒業生の中には、さらなる学びを求めて本短期大学の専攻科へ進学する者も少なくありませんでした。著名な卒業生には、栄養学の研究者や看護学の研究者、アナウンサーなどがいます。

天使女子短期大学は、その短いながらも地域社会、特に医療・福祉・栄養分野の人材育成に貢献した歴史を持つ短期大学です。国内最初期の短大の一つとして、キリスト教精神に基づいた質の高い教育を提供し、多くの卒業生を社会に送り出しました。

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