天命 (後金)

天命（てんめい）

天命は、17世紀初頭、後金の太祖ヌルハチが定めた元号です。1616年から1626年までの11年間使用され、この期間は後金の勢力が急速に拡大し、明との間で激しい戦いが繰り広げられた重要な時代でした。満州語では「ᠠᠪᡣᠠᠢ ᡶᡠᠯᡳᠩᡤᠠ（abkai fulingga）」と表記されます。

元号の概要

天命は、ヌルハチが後金を建国した際に定められました。この元号の採用は、独立した国家としてのアイデンティティを確立し、明朝からの自立を内外に示す意図があったと考えられます。ただし、この元号が実際に当時使用されていたかどうかについては、後世に制定されたとする説も存在しており、歴史学者の間でも議論の対象となっています。

天命時代の出来事

天命の時代は、後金が急速に勢力を拡大した時期であり、数々の重要な出来事がありました。

天命元年（1616年）: ヌルハチは後金を建国し、元号を天命と定めました。この建国は、明朝に対する独立を明確にするものであり、その後の後金と明との対立を決定づけました。
天命3年（1618年）: ヌルハチは「七大恨」を発表し、明への宣戦布告をしました。この「七大恨」は、明朝に対する積年の不満と恨みを表明したもので、後金の軍事行動を正当化するプロパガンダとしての役割も果たしました。
天命4年（1619年）: サルフの戦いで後金軍は明軍に圧勝しました。この戦いは、後金が明朝に対して軍事的に優位に立つ上で非常に重要な転換点となりました。この勝利によって、後金は遼東半島における支配を確立し、明朝の勢力を大きく後退させました。
天命6年（1621年）: 後金は瀋陽と遼陽を攻略しました。これらの都市は遼東における重要な拠点であり、後金はこれらの都市を手に入れることによって、遼東半島における支配をさらに強化しました。
天命11年（1626年）: 後金軍は山海関への攻撃を試みましたが、これは失敗に終わりました。その直後、ヌルハチは病死しました。ヌルハチの死後、後金の指導権は八旗制度を確立したとされるホンタイジに移りました。

天命期の歴史的意義

天命の時代は、後金が明朝からの独立を宣言し、中国東北部において勢力を確立した重要な時期でした。ヌルハチのリーダーシップの下、後金は軍事的、政治的に大きな進展を遂げ、後の清朝建国へと繋がる基盤を築きました。

西暦との対照表

後金元号 天命 と西暦との対応は以下の通りです。

天命元年：1616年
天命2年：1617年
天命3年：1618年
天命4年：1619年
天命5年：1620年
天命6年：1621年
天命7年：1622年
天命8年：1623年
天命9年：1624年
天命10年：1625年
天命11年：1626年

他の元号との対照表

天命期は、明の万暦帝、泰昌帝、天啓帝の時代と重なります。

関連項目

* 元号一覧 (中国)

天命は、後金の勃興と明朝の衰退という歴史的な転換期における、重要な指標となる元号です。

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