天地創造 (映画)

『天地創造』（てんちそうぞう、英:The Bible: In the Beginning...、伊:La Bibbia）は、1966年に公開された、アメリカ合衆国とイタリアの合作による壮大な叙事詩映画です。監督はジョン・ヒューストン、出演はマイケル・パークス、ウラ・ベルグリッド、リチャード・ハリス、ジョン・ヒューストン自身、スティーヴン・ボイド、ジョージ・C・スコット、エヴァ・ガードナー、ピーター・オトゥールといった豪華俳優陣を揃えています。

本作は『旧約聖書』の創世記を基にしており、天地創造からアブラハムによるイサクの燔祭（いけにえ）まで、聖書の物語の重要な出来事を7つのエピソードに凝縮して描いています。神による天地創造、アダムとイヴの楽園追放、カインとアベルの物語、ノアの大洪水、バベルの塔、アブラハムとサラ、そしてイサクの燔祭といった、聖書を代表する数々の場面が、迫力ある映像で再現されています。

映画の技術的な側面にも注目すべき点があります。65mmカメラを使用して撮影された映像は、圧倒的なスケール感と臨場感を生み出しています。さらに、当時としては画期的な「ディメンション150」と呼ばれる上映システムが採用されました。これは、3チャンネルのトラックから差分を抽出して5チャンネルの疑似サラウンド音声を生成し、特別なレンズを用いて150度の角度を持つ巨大な湾曲スクリーンに投影するというものでした。このシステムにより、観客は聖書の物語の世界に深く没入することができたのです。

音楽もまた、この映画の大きな魅力の一つです。当初はイーゴリ・ストラヴィンスキーとゴッフレド・ペトラッシへの作曲依頼が検討されていましたが、諸事情により実現せず、最終的には『涅槃交響曲』のレコードを聴いたジョン・ヒューストン監督の強い意向により、黛敏郎が抜擢されました。黛敏郎は、本作で1966年度のアカデミー作曲賞とゴールデングローブ賞作曲賞にノミネートされ、高い評価を受けました。なお、黛敏郎への依頼決定前に、エンニオ・モリコーネが作曲を進めていたことも知られています。しかし、契約上の問題により、モリコーネの起用は実現しませんでした。

ストーリーは、旧約聖書の創世記の冒頭からアブラハムの物語までを網羅しています。神は天と地を創造し、光と闇、そして海と陸を創造しました。アダムとイブが楽園を追放され、カインがアベルを殺害する悲劇、ノアの方舟と大洪水、バベルの塔の建設と人類の言語の分化、アブラハムとサラの物語、そして最後にイサクの燔祭と、旧約聖書の重要な出来事が、ドラマチックに展開していきます。それぞれのエピソードは、人間の罪と罰、信仰と試練、そして神の慈悲といった普遍的なテーマを深く掘り下げており、観客に強い感動を与えます。

キャストには、名優たちが名を連ね、それぞれの役柄を見事に演じています。また、日本語吹き替え版も存在し、石川進、中村メイコ、小山田宗徳といったベテラン声優陣が参加しています。『こどものための聖書物語 天地創造』という題名でレコード版も発売され、幅広い世代に聖書の物語が届けられました。

『天地創造』は、聖書の物語を壮大なスケールと高い芸術性で描いた、歴史に残る名作映画です。65mmカメラによる映像美、独自のサウンドシステム、そして黛敏郎の力強い音楽は、今でも多くの映画ファンを魅了し続けています。宗教映画という枠を超えて、人間の存在と信仰について深く考えさせる、忘れられない作品と言えるでしょう。

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