天山丸

天山丸（てんざんまる）

天山丸は、日本の関釜航路において重要な役割を果たした鉄道連絡船です。その名は中国西部に位置する天山山脈に由来しています。天山丸は、鉄道省が運営する船の中で、初めての天山丸型の船であり、開発の背景には当時の旅客輸送の需要がありました。

開発の背景

1936年から1937年にかけて就航した金剛丸型の連絡船は、日中戦争と太平洋戦争のさなかで、膨大な数の日本軍や満蒙開拓団などを乗せたことで大きな混雑を引き起こしていました。特に1940年には、年間の旅客輸送数が200万人を超え、乗客が乗り切れない事態が発生するなど、改善が急務となりました。これを受け、新たに金剛丸型を拡張した天山丸型の建造が計画されました。

設計の特徴

天山丸の設計は、鉄道省の船舶課に属していた檜垣定雄によって行われました。彼はすでに宗谷丸の設計で実績を残しており、その優美な船形が話題となりました。船体には傾斜した2本のマストと2本の煙突を特徴としており、公試では当時の日本商船の中でも最速となる23.264ノットを記録しました。さらに、旅客定員の増加を目的に数多くの座席を追加し、1等と2等の食堂を3倍の数に拡充しました。また、夜間の航行を前提としていた金剛丸型に対し、天山丸は昼夜問わず運航が可能であるよう設計され、展望室を兼ねた休憩室も設けられました。

艦艇建造が優先される中、天山丸は1940年11月19日に三菱長崎造船所で起工され、1941年8月8日に進水、1942年9月10日に竣工が完了しました。しかし、艦艇建造の遅れから、同型の第2船である崑崙丸の建造が約1年半の遅れをとりました。

崑崙丸の沈没とその影響

崑崙丸は1943年に航行を開始しましたが、同年10月5日には米海軍の潜水艦による攻撃で沈没しました。この事件は、天山丸に衝撃を与え、翌日から関釜航路の夜間航行が禁止され、昼間に限られた航行が制限されるなど、大きな変化がもたらされました。

沈没までの道のり

天山丸は運輸通信省に移籍後、1945年の春にさらなる困難に直面しました。特にB-29による機雷攻撃や空襲の影響で、関釜航路はほぼ閉鎖状態となり、7月28日には大社港から隠岐諸島に向かう通過が許可された際、天山丸は護衛艦に護衛され出港しましたが、同日にアメリカ軍の襲撃を受けました。顧客が乗船していなかったことと、設計上の特性から沈没時の戦没者はわずか2名と少なかったものの、その後の海戦の中で重要な位置を占める存在でありました。

結語

天山丸は、設計の美しさ、当時の輸送需要への対応、そして歴史の中での出来事を通じて、多くの関心を集めてきました。その活躍は、当時の日本の航海の重要な一幕として語り継がれるべき歴史です。

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