天平感宝

天平感宝（てんぴょうかんぽう）

天平感宝は日本の元号の一つで、749年に採用されました。この元号は、天平の後、続けて天平勝宝に改元されるまでのわずか3ヶ月間のみ使用されたものです。そのため、実質的に元年しか存在しないという独特な特徴を持っています。

この時期の天皇は聖武天皇で、彼の治世のもとで天平感宝は制定されました。日本が初めて採用した四文字の年号でもあり、その珍しさからも注目されています。ただし、後に書かれた文書や資料ではこの元号はほとんど使用されていないため、歴史的にはあまり知られていない存在となっています。たとえば、『正倉院文書』や木簡の中には「天感」や「感宝」と略されることが多く見受けられます。

当時の日本では金の産出はないとされており、金属のほとんどは輸入に依存していました。しかし、聖武天皇は当時、大仏像の建立に際して金の探索を全国的に推進していました。天平21年（749年）には、涌谷で初めて金が採掘され、この金が陸奥国守の百済王敬福によって天皇に献上されました。この出来事は聖武天皇にとって神仏の奇跡として受け止められ、特に三宝に感謝を表明する機会となりました。

724年4月1日の宣命では、天皇が国民とともに現人神としてその金を受け取り、恵みを与える政治をすることを約束しました。この中で「御代の年号に字を加え賜わく」という発言があり、四字年号の重要性も示されました。この四字年号は、中国の歴史上の先例、特に武則天の天冊万歳や万歳登封に倣ったものとされています。

さらに、天平感宝から神護景雲までの5つの元号はすべて四文字であり、その後の時代にはこのような形式の元号は採用されていません。興味深いことに、これらの元号の期間は阿倍内親王への譲位からその崩御までの期間と重なります。このため、749年から770年までの時期は「四字年号時代」として研究されることもあります。

改元に関する記録としては、749年4月14日、百済王敬福が900両の金を献上したことで改元が決定されました。天平感宝元年の7月2日には、天平勝宝への改元が行われたことが記されています。

天平感宝が存在していた間には、大安寺など12寺に対して墾田地や稲を寄進するなどの出来事もありました。また、同年の7月には諸寺の墾田地の限度額を定めることが行われました。これらの活動は、当時の国家財政や寺院の発展に寄与するものであり、元号の短命にもかかわらず重要な歴史的意義を持つものとなっています。

在る意味で、天平感宝は日本の元号史における一つの興味深いエピソードともいえるでしょう。その短い期間にも関わらず、天平感宝は日本の歴史を理解する上での一端を担っているのです。

もう一度検索