天明の大火

天明の大火

天明の大火（てんめいのたいか）は、1788年1月30日（天明8年3月7日）、京都市で発生した大規模な火災です。この火災は、出火地点の名前から団栗焼け（どんぐりやけ）とも呼ばれ、干支にちなみ申年の大火（さるどしのたいか）とも称されますが、一般的には京都の大火というとこの天明の大火を指します。

火災の発生と影響

この大火は、京都の歴史において最も深刻な火災の一つとされ、御所や二条城などの重要な建物を含む京都市街の約8割が火に包まれました。被害の規模は、歴史的な戦火である応仁の乱による焼亡をも超えており、京都の経済活動に深刻な影響を与えました。江戸時代には、この大火に加えて宝永の大火や元治のどんどん焼けといった大火も相次ぎ、これらをまとめて「京都の三大大火」とすることもあります。

出火の経緯

火災は、1月30日の未明、鴨川の東側、宮川町団栗辻子（現在の京都市東山区宮川筋付近）の町家から発生しました。放火によって引き起こされたとされ、強風により火炎は瞬く間に南の五条通へ広がり、その後も火の粉が飛び火して洛中に延焼しました。当日夕方には二条城本丸が燃え上がり、さらに御所にも火が移りました。最終的に火は2日後の2月2日（3月9日）に鎮火されました。

この火災によって、東は河原町から大和大路、北は上御霊神社から今宮御旅所、西は智恵光院通まで、南は東本願寺から六条通に至るまで、膨大な面積が焼失しました。京都市内1967町のうち1424町が焼失、家屋の倒壊数は約36,797、世帯数は約65,340、また寺院や神社を含む焼失数は211に上り、死者は150名と記録されていますが、実際の数は1800名に及ぶとする説もあります。

再建とその後の影響

光格天皇は、御所の再建が完了するまでの3年間、聖護院を仮御所として使用しました。幕府はこの火災の影響を受け、老中の松平定信を京都に派遣し、朝廷との善後策を協議しました。さらに、裏松固禅の研究によって焼失した内裏の再建が古い形式で行われることになり、その費用は幕府から提供されました。しかし、財政難や大飢饉の影響を考慮し、松平は以前のような壮麗な御所を建設することには反対しました。

天明の大火の影響は、その後の京都の歴史にも影響を及ぼし、幕府と朝廷の関係が変化するきっかけとなりました。これは後に「尊号一件」などの幕府と朝廷間の紛争に繋がります。だが、火災から約10年後の1798年には、京都方広寺の大仏殿が落雷により全焼し、再び火災の危機を迎えることとなりました。この時には、幸いにも市街地への広がりは避けられましたが、天明の大火の記憶は住民の心に深く刻まれています。

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