天明鋳物

天明鋳物：歴史と美

天明鋳物（てんみょういもの）は、栃木県佐野市天明地区で製造された鋳物、または佐野の鋳物師によって製造された鋳物を指します。特に茶釜は、福岡県の芦屋釜と並び「西の芦屋、東の天明」と称されるほど高い評価を受けています。天命鋳物（天命）と表記されることもあります。

歴史

天明鋳物の創業時期や由来には諸説ありますが、伝承によれば平安時代中期の天慶年間（934～947年）に、河内国丹南から5名の鋳物師が移住し、藤原秀郷の命によって兵器類を鋳造したのが始まりとされています。

鎌倉時代末期には、すでに天明地域で鋳物生産が行われており、弘安年間には日常 ব্যবহারの雑炊釜や湯沸かしなどの実用的な釜が数多く生産されていました。

最盛期は室町時代から江戸時代にかけてで、室町時代には侘茶の流行とともに茶の湯で使用する茶釜の生産が盛んになりました。芦屋釜が端正で優雅な様式であるのに対し、天明釜（天命釜）は、荒い鋳肌の素朴さや独創的な形態が茶人に好まれました。

中世以来佐野を治めていた佐野氏が、徳川家の命により慶長7年（1602年）に唐沢山城から春日岡城へ移転する際、町割りの中で天明金屋町に鋳物師の居住地が形成されました。

2023年（令和5年）1月19日には、佐野市天明鋳物振興協議会によって「天明鋳物」が地域団体商標に登録されました。

代表的作品

天明鋳物師が鋳造した作品で、現在確認できる最古のものは、元亨元年（1321年）12月の銘を持つ千葉県鋸南町にある日本寺の寺鐘です。また、銘のある最古の茶釜は、文和元年（1352年）に作られた極楽寺釜（大阪市立美術館蔵）とされています。

日本寺鐘

千葉県鋸南町の日本寺にある寺鐘で、元亨元年（1321年）12月の銘があり、「下野州佐野庄堀籠郷」と刻まれています。当初は天宝寺鐘として鋳造され、鎌倉五山の浄妙寺鐘となり、その後日本寺の寺鐘となりました。これは国の重要文化財に指定されています。

鉄「極楽律寺」銘尾垂釜

文和元年（1352年）の銘がある茶釜で、大阪市立美術館に所蔵されています。こちらも国の重要文化財に指定されています。

惣宗寺・銅鐘

惣宗寺（佐野厄除け大師）にある重さ1125kgの銅鐘で、明暦4年（1658年）に天明鋳工105人が協力して寄進したものです。佐野市の指定文化財となっています。

天明鋳物は、その長い歴史の中で培われた技術と美意識が息づく、日本の貴重な文化遺産です。

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