鎌倉五山

鎌倉五山：鎌倉幕府と禅文化の隆盛を彩る五つの寺院

鎌倉五山とは、鎌倉市に所在する5つの臨済宗寺院を指し、建長寺、円覚寺、寿福寺、浄智寺、浄妙寺の5寺院がその名を連ねます。これらの寺院は、単なる寺院群ではなく、鎌倉幕府の庇護のもと、独自の寺格制度を確立し、日本の禅文化に大きな影響を与えた存在です。

鎌倉五山の歴史：中国との交流と幕府の保護政策

鎌倉五山の起源は、南宋時代の寺院制度に由来します。13世紀以降、臨済宗は鎌倉幕府の強力な庇護を受け、急速に勢力を拡大しました。この背景には、九州における朝廷系勢力との対立や、貿易港を巡る利権争いがあり、鎌倉幕府は対抗勢力として臨済宗を保護するという戦略を取ったと考えられています。

初期の鎌倉五山については諸説ありますが、鎌倉時代の創設当初から、京都の寺院も含めて五山が定められていたとする説や、鎌倉にのみ限定されていたとする説などがあります。室町時代に入ると、足利義満によって南禅寺が別格とされ、京都五山と鎌倉五山が明確に区別されるようになりました。至徳3年（1386年）には、京都の南禅寺、天竜寺、相国寺、建仁寺、東福寺、万寿寺、そして鎌倉の建長寺、円覚寺、寿福寺、浄智寺、浄妙寺が五山に定められ、この構成が後の五山制度の基礎となりました。

鎌倉幕府は、戦乱によって獲得した荘園や領地の一部を寺社領として禅寺に管理を委ね、禅寺は幕府の重要なパートナーとして政治・経済に深く関与していました。

鎌倉五山の寺格と特徴：それぞれの寺院の歴史と見どころ

京都・南禅寺（別格上位）

南禅寺は、京都に位置する臨済宗南禅寺派の大本山であり、鎌倉五山を凌駕する別格の上位に位置付けられました。

建長寺（第一位）

神奈川県鎌倉市山ノ内に位置する臨済宗建長寺派の大本山。巨福山建長興国禅寺と号し、北条時頼の創建、蘭渓道隆を開山とする由緒ある寺院です。鎌倉五山の中でも最高の格式を誇り、国指定史跡の境内には多くの文化財が遺されています。

円覚寺（第二位）

鎌倉市山ノ内に位置し、瑞鹿山円覚興聖禅寺と号する臨済宗円覚寺派の大本山。北条時宗が元寇の戦没者を弔うために創建し、無学祖元を開山としました。北条得宗家の祈願寺として栄え、鎌倉時代の歴史を語る上で重要な寺院です。

寿福寺（第三位）

鎌倉市扇ヶ谷にある臨済宗建長寺派の寺院。亀谷山寿福金剛禅寺と号し、北条政子を創建者、栄西を開山とする古刹です。鎌倉五山の中でも特に歴史が古く、国指定史跡の境内には多くの文化財が残されています。

浄智寺（第四位）

鎌倉市山ノ内に位置する臨済宗円覚寺派の寺院。金宝山と号し、北条師時が創建、南洲宏海、大休正念、兀庵普寧の3名が名を連ねる開山を迎えました。国指定史跡である境内には、歴史を感じさせる建造物が数多く残されています。

浄妙寺（第五位）

鎌倉市にある臨済宗建長寺派の寺院。稲荷山浄妙廣利禅寺と号し、足利義兼の創建、退耕行勇を開山とする寺院です。婦人病に霊験のある神として知られる淡島明神を祀っており、多くの参拝客が訪れます。

鎌倉五山と禅文化：日本の文化への貢献

鎌倉五山は、単なる寺院群ではなく、鎌倉幕府の保護政策と禅宗の隆盛という歴史的背景が織りなす、日本の文化遺産です。これらの寺院は、建築、庭園、仏像などの貴重な文化財を数多く残しており、日本の禅文化を理解する上で欠かせない存在となっています。それぞれの寺院が持つ独特の歴史と文化に触れることで、鎌倉時代の精神性や、日中文化交流の歴史を深く学ぶことができます。

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