天智と天武-新説・日本書紀-

『天智と天武-新説・日本書紀-』は、中村真理子が『ビッグコミック』で連載した歴史漫画です。園村昌弘が原案監修を務め、2012年から2016年まで連載されました。

概要

この作品は、中大兄皇子（後の天智天皇）と大海人皇子（後の天武天皇）という、日本古代史における重要な兄弟の愛憎関係を軸に展開されます。副題に「新説」とあるように、従来の歴史解釈にとらわれない大胆な設定が特徴です。

特徴的な設定

大海人皇子の出自: 大海人皇子の父親を蘇我入鹿とする設定は、従来の通説を覆すものです。これにより、兄弟の関係性に複雑な愛憎が加わります。
中臣鎌足の正体: 中臣鎌足を百済の王子・豊璋とする設定も、物語に国際的な視点と複雑な政治的背景をもたらします。
BL要素: 『ビッグコミック』では異例ともいえるBL（ボーイズラブ）をメインテーマに据え、兄弟の愛憎をより深く掘り下げています。直接的な描写も含まれることで、読者に強い印象を与えます。

主な登場人物

中大兄皇子（天智天皇）: 皇極天皇の息子であり、蘇我入鹿を暗殺するクーデター（乙巳の変）を主導。優秀な頭脳と決断力を持つ一方、蘇我入鹿への複雑な感情に苦悩し、政治的な暴走を繰り返します。
大海人皇子（天武天皇）: 皇極天皇の息子で、蘇我入鹿が実父。聡明でカリスマ性にあふれる人物として描かれています。兄である中大兄皇子との間で、複雑な感情を抱えながらも、自らの道を切り開いていきます。
豊璋（中臣鎌足）: 百済の王子として日本に人質として渡来。日本の対外政策を変えるために乙巳の変に加担し、後に中臣鎌足の名を与えられます。
皇極天皇（斉明天皇）: 中大兄皇子と大海人皇子の母。朝鮮出兵に消極的だったため、中大兄皇子に暗殺されるという設定です。
額田王: 大海人皇子の妻でしたが、中大兄皇子に奪われます。兄弟の愛憎劇を象徴する女性です。
鸕野讚良皇女: 中大兄皇子の娘で、後に大海人皇子の妻となり、草壁皇子らの母となります。
大友皇子: 中大兄皇子の息子。聡明な人物として描かれ、後に壬申の乱で大海人皇子と対立する運命を背負います。
* 史（藤原不比等）: 豊璋の次男。後に日本書紀の編纂を指導し、天武天皇（大海人皇子）とその係累である蘇我氏の名誉を貶める記述を指示します。

史実との違いと魅力

『天智と天武-新説・日本書紀-』は、大胆なキャラクター設定とBL要素によって、従来の歴史漫画とは一線を画しています。史実を基にしながらも、登場人物の感情や人間関係を深く掘り下げ、読者に新たな視点を提供します。特に、天智天皇と天武天皇の複雑な愛憎劇は、多くの読者の心を捉えました。歴史ファンだけでなく、人間ドラマや恋愛劇が好きな方にもおすすめの作品です。

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