天神堂遺跡

天神堂遺跡の概要

天神堂遺跡（てんじんどういせき）は、山梨県南巨摩郡南部町に位置する旧石器時代の集落遺跡です。この遺跡は、県の最南部に位置し、富士川の左岸、河岸段丘の上に広がっています。標高は約130メートルに達し、周囲の地形とも密接に関係しています。

地質と発見の経緯

この遺跡は、1970年に町立万沢小学校の校庭拡張工事の際に発見されました。地域の研究者である山本寿々雄が主導し、地域住民の協力を得て実施された発掘調査は、山梨県内で初めての本格的な旧石器時代遺跡の調査となりました。発掘により、様々な層から構成される礫群や多くの石器が見つかり、旧石器時代の生活様式についての貴重な手がかりが得られました。

出土品の詳細

天神堂遺跡からは、約40から60の礫で形成された10基の礫群が発見されています。これらは、蒸し焼き料理に使用されていたと考えられる焼礫の集合体です。また、900点以上の石器や剥片も発見され、これらはいずれも重要な考古学的資料となっています。

石器には、縦長の剥片を基にしたナイフ形石器や、両面に加工が施された槍先形尖頭器などが含まれます。さらに、ナイフ形石器と突頭器の中間に位置する両義的石器や彫器、削器、石錐も出土しており、多様な技術が当時の人々により駆使されていたことを示しています。使用されている石材は、主に地元産の泥岩と、長野県や八ヶ岳周辺から供給された黒曜石です。

遺跡の意義

天神堂遺跡は、旧石器時代における人々の生活に関する貴重な証拠を提供しています。発見された槍先形突頭器は、この地域での狩猟技術や社会構造を考察する上での重要な資料です。これらの石器の多くは、関東地方の遺跡群に似た特性を持ち、愛鷹山南麓から箱根山西南麓に至る地域との関係をも示唆しています。

地域の考古学的背景

この遺跡は、山梨県内に点在する旧石器時代の遺跡の一部であり、特に富士川流域には同時代の遺構が多く存在しています。町域には、旧富沢町を含む9箇所の遺跡が分布しており、これらは旧石器時代の生活様式を明らかにするための重要な地域として位置づけられています。

このように、天神堂遺跡は山梨県における考古学の重要な資源であり、過去の人々の生活や文化を読み解く手がかりを提供しています。今後の研究に期待が寄せられる重要な遺跡です。

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