天神川 (宝塚市・伊丹市)

天神川：歴史と自然が織りなす、宝塚と伊丹を繋ぐ水路

天神川は、兵庫県宝塚市と伊丹市を流れる武庫川水系の二級河川です。天王寺川の支流として、宝塚市の中山五月台小学校付近に源を発し、伊丹市で天王寺川に合流します。全長約3.6kmの天神川は、豊かな歴史と自然、そして現代社会の課題を同時に抱える、魅力的な河川です。

天神川の地理：里山から都市へ

天神川の源流は、かつては里山が広がる静かな場所でした。しかし、昭和40年代からの宅地開発により、現在はコンクリート護岸で覆われ、一部区間では暗渠化も進んでいます。上流部は傾斜地のため、護岸工事は不可欠ですが、自然環境への影響は避けられません。

宝塚市立中山五月台中学校付近からは、深い谷の自然地形となり、豊かな自然を感じさせる区間が続きます。宝塚中筋団地を過ぎると平野部に入り、天満神社の脇を流れ、阪急宝塚線、国道176号を横断します。このあたりから天井川となり、JR宝塚線と交差した後、伊丹市に入ります。

伊丹市に入ると、中国自動車道、国道176号バイパスと交差しながら南下し、昆陽池公園北西端で直角に折れ曲がります。昆陽池公園の北辺をなぞるように西進し、兵庫県道42号尼崎宝塚線と交差した後、天王寺川と合流します。

天神川と人々の暮らし：園芸と歴史の繋がり

天神川流域は、古くから園芸が盛んな地域として知られています。特に宝塚市山本地区には、500軒を超える園芸農家や造園会社が集中しており、良質な川砂を利用した盆栽や植木の生産が盛んです。

天神川の砂は、古くから園芸用土として利用されてきました。天満神社や松尾神社の境内にも、天神川の砂が撒かれているという記録が残っています。また、豊臣秀吉の家臣であった坂上頼泰が山本地区に隠棲し、園芸に励んだことも、この地の園芸発展に大きく貢献しました。彼の接ぎ木の技術は、日本の園芸技術向上に多大な影響を与えたと言われています。

天神川の歴史：行基と最古の用水路

1175年（安元元年）に記された行基年譜には、行基が摂津国川辺郡山本村に滞在し、昆陽池の掘削に関わったとの記述があります。この記述と、天神川の流路、昆陽池への取水口との位置関係から、天神川は行基によって開削された可能性が高いと推測されています。もしこの推測が正しければ、天神川は天王寺川と並んで国内最古の用水路の一つとなります。

天満神社には、行基が杖を投げたという伝説が残る大きな石が祀られています。この伝説は、天神川と行基の深い関わりを示唆する、興味深いものです。

天神川と交通：鉄道トンネルの痕跡

明治時代、阪鶴鉄道（現在のJR福知山線）が開通した際、天神川はトンネルで貫通されました。このトンネルは、福知山線の高架化・複線化が行われた1980年まで使用され、その後埋められました。また、第二次世界大戦中には、陸軍の軍事施設への軍用側線が、天神川をトンネルで通過していました。このトンネルは現在も残っています。

天神川の課題：洪水と環境

天神川流域では、度々洪水被害が発生しています。1961年の梅雨前線豪雨や、2023年5月の大雨では、堤防決壊による床上・床下浸水が発生しました。流域の宅地化の進行も、洪水リスクを高める要因の一つです。

上流部の宅地化により、水質の悪化も懸念されています。しかし、平野部では、ヘイケボタルが生息しており、伊丹市立鴻池小学校では、ヘイケボタルの増殖にも取り組んでいます。

天神川流域の観光と施設

天神川流域には、多くの観光地や施設があります。宝塚市の中山地区、伊丹市の荒牧バラ公園、伊丹市立天神川小学校、伊丹スポーツセンター、昆陽池公園など、自然と歴史、文化が調和した魅力的な場所が点在しています。

まとめ

天神川は、歴史と自然、そして現代社会の課題が複雑に絡み合った河川です。古くからの園芸との関わり、行基伝説、そして現代の都市化、洪水リスクなど、多様な側面から天神川を考えることで、私たちが暮らす地域の歴史と環境について、深く理解を深めることができるでしょう。

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