天覧兜割り

天覧兜割り（てんらんかぶとわり）

天覧兜割りは、明治時代に行われた名高い兜の試し斬り試合です。この試合は、1886年11月10日に東京府麹町区紀尾井町にある伏見宮貞愛親王邸で開催されました。明治天皇が臨席し、重要な文化行事として弓術や能楽、さらには試し斬りが披露されました。

概要

この日の催しでは、弓術や鉢試し、さらには席画、能楽、狂言が行われました。特に注目を集めたのは鉢試しで、刀や槍、弓を用いた武道の技術が披露されました。刀の部門には、榊原鍵吉（直心影流）、逸見宗助（立身流）、上田馬之助（鏡新明智流）の三名が出場しました。槍の部門では児玉惟時、甲川謙、小笠原武英、弓では関口源太が参加しました。

この試合の中で、刀による兜の試し斬りが「天覧兜割り」として特に名を馳せています。榊原鍵吉は、本試合での圧巻の技を見せ、兜を見事に斬り裂きました。彼は明治維新期においても撃剣の興行を行っていたことから、一流の剣術家として知られていました。

試合の経緯

興味深いことに、榊原は試合の約一か月前に「刀で兜を切ることはできない」として出場を辞退しようとしました。しかし、周囲からの期待が高まり、彼は当日、悲壮な覚悟で家を出ることとなりました。その際、偶然にも刀剣商から同田貫という名刀を手渡されました。このことが、彼の運命を大きく変えたのです。

逸見宗助と上田馬之助は、残念ながら兜割りに失敗したものの、榊原はその名刀を用いて明珍作の十二間筋の兜を斬りました。切り口は約3寸5分、深さは5分という素晴らしい出来栄えでした。この偉業によって、伏見宮からは金10円が下賜され、榊原の名声はさらに高まりました。

榊原鍵吉の伝説

この天覧兜割りの出来事は、榊原鍵吉の剣豪としての名を不朽のものとし、その技術は後世に語り継がれています。また、同田貫の強度や切れ味を物語る逸話としても知られています。榊原の前には、以前に徳川家茂の御前で同田貫を用いての成功体験もあったことから、彼は自信を持っていたそうです。

文化的影響

天覧兜割りは、日本の武道における重要なイベントの一つとなりました。また、この試合を通じて、剣術の技術が一層発展し、武道に対する関心を高めるきっかけとなりました。

参考文献

• - 津本陽『明治兜割り』、講談社
• - 堂本昭彦『明治撃剣家 風のごとく発す』（次朗吉我慢）、徳間文庫

関連項目

• - 済寧館
• - 昭和天覧試合

天覧兜割りは、単なる試合でなく、日本の文化や歴史に深く埋め込まれた重要な出来事として、多くの人々に記憶されています。

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