太僕

太僕（たいぼく）とは

太僕とは、古代中国に存在した官職の一つです。秦の時代に起源を持ち、前漢、後漢と時代を経るごとにその役割や組織構成に変化が見られました。主に皇帝の車馬を管理する役割を担い、現代でいうところの車両管理部門の長に近い存在でした。

秦・前漢における太僕

太僕という官職は、九卿の一つとして秦の時代に設けられました。その起源は秦の中央官に遡り、主な職務は皇帝の車馬を管理することでした。太僕の下には2人の丞が配置され、職務を補佐していました。

前漢においても太僕は引き続き重要な官職として存在し、以下のような属官が置かれていました。

大厩令：大厩丞5人、大厩尉1人
未央令：未央丞5人、未央尉1人
家馬令：家馬丞5人、家馬尉1人（武帝の太初元年に挏馬と改称）
車府令：車府丞
路軨令：路軨丞（武帝の太初元年に設置）
騎馬令：騎馬丞
駿馬令：駿馬丞
龍馬監：龍馬長 - 龍馬丞
閑駒監：閑駒長 - 閑駒丞
櫜泉監：櫜泉長 - 櫜泉丞
騊駼監：騊駼長 - 騊駼丞
承華監：承華長 - 承華丞
牧師苑令6人：辺境で赴任
牧櫜令：牧櫜丞
昆蹏令：昆蹏丞
中太僕：皇太后の車馬を管轄（非常設）

これらの属官は、それぞれが特定の種類の馬や車、あるいは関連施設を管理する役割を担っていました。特に、武帝の時代には、新たな官職が設置されたり、名称が変更されたりするなど、組織の再編が行われたことが窺えます。

後漢における太僕

後漢においても、太僕の官職は引き続き設置されました。定員は1人で、秩禄は中二千石でした。丞は1人で、秩禄は千石でした。後漢における太僕の属官は以下の通りです。

考工令1人（六百）：左右丞各1人、員吏109人（兵器の製作を主に担当）
車府令1人（六百）：丞1人、員吏24人（輿、車を担当）
未央厩令1人（六百）：長楽厩丞1人（輿、馬を担当）
未央厩令所属：員吏70人、卒騶（飼育員）20人
長楽厩丞所属：員吏15人、卒騶20人、苜蓿苑官田所の守備1人

後漢の太僕の属官を見ると、兵器の製作を担当する考工令が置かれている点が特徴的です。これは、後漢の時代には、太僕が単なる車馬の管理だけでなく、軍事的な側面も担っていたことを示唆しています。また、未央厩と長楽厩という2つの厩舎が存在し、それぞれに属官や人員が配置されていたことから、馬の管理体制がより専門化されていたことが分かります。

まとめ

太僕という官職は、古代中国において皇帝の車馬を管理する重要な役割を担っていました。秦から前漢、後漢と時代が移り変わる中で、その組織構成や職務内容に変化が見られましたが、常に皇帝の移動手段を支える存在として、国家を運営する上で欠かせない役割を果たしていました。

参考文献
班固『漢書』表第七上「百官公卿表」上
* 司馬彪『続漢書』「百官志三」

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