奈良原喜左衛門

奈良原 喜左衛門の生涯

奈良原喜左衛門（ならはら きざえもん）は、幕末の薩摩藩士として知られる武士である。彼の家系は、嵯峨源氏渡辺氏流の筒井氏一族、または藤原氏と自称され、代々小番を務める名門であった。父は奈良原助左衛門で、喜左衛門はその長男にあたる。

幼少期と学び

喜左衛門は鹿児島城下の高麗町で生まれた。彼の父である助左衛門は、近思録崩れにより遠島に処された過去があり、その影響で喜左衛門の家族の名は歴史に刻まれている。また、文化年間にはすでに高麗町に奈良原家が居住していたことが記録に残っている。

武士としての素養を身につけるべく、喜左衛門は薬丸半左衛門に師事し、薬丸自顕流の技術を学んだ。この流派で彼は達人と称され、さらに弓術にも秀でた才能を発揮した。彼の入門誓紙文は、鹿児島市史三の『薬丸家文書』に記されており、彼の武道の腕前を証明している。

政治活動と帰国

喜左衛門は、藩主である島津斉彬からの命を受け、一橋慶喜の擁立を図るべく江戸に向かうが、この試みは失敗に終わり彼は帰国した。1859年には精忠組に加盟し、当初は尊皇攘夷の思想を掲げていたが、次第に公武合体に政策を転換していく。

文久2年（1862年）、島津久光の命に従い、上京していた彼は、激派の有馬新七を説得する任務にあたったが、ここでも失敗を経験する。その後、久光に付き添って江戸に行く際、彼は生麦事件に関与することになる。この事件では、行列を横切った英国人、チャールズ・レノックス・リチャードソンに対し、斬りつけたとされている。しかし、喜左衛門の実弟、奈良原繁の孫によると、その実行は繁によるものとされ、喜左衛門が身代わりとなったという見解もある。

戦争と活躍

文久3年（1863年）に起こった薩英戦争では、彼は海江田と共にスイカ商人に扮して敵艦を奪おうとする試みを行ったが、これもまた成功には至らなかった。その後、喜左衛門は主に京都での活動に移っていく。彼は元治元年（1864年）の禁門の変では、出水隊の隊長として参加し、多くの戦闘でその力量を示した。

最期と影響

その後、喜左衛門は慶応元年（1865年）5月18日に京都の薩摩藩邸で33歳という若さで亡くなった。彼の墓所は東福寺即宗院や鹿児島市露重墓地に存在している。この若くして亡くなった武士は、江戸時代末期の激動の時代に多大な影響を与えたとして、地元や歴史に名を残す存在である。

特に生麦事件は奈良原家の兄弟関係に亀裂をもたらしたとされ、鹿児島の人々の記憶にも色濃く残っている。このように、喜左衛門の生涯は、幕末の動乱と彼自身の活動を通じて、今なお語り継がれている。

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