奝然

奝然（ちょうねん）

奝然（ちょうねん）は、平安時代中期の天慶元年（938年）に生まれ、長和5年（1016年）に没した東大寺の僧です。三論宗を学び、法済大師とも称されました。

生涯

奝然の生涯は、清凉寺の木造釈迦如来立像の胎内から発見された「義蔵奝然結縁手印状」によって詳細が明らかになりました。俗姓は秦氏であるとされていますが、宋では五位藤原真連の子と称していました。手印状によれば、天慶元年（938年）に誕生し、東大寺で出家後、観理に三論教学を、石山寺の元杲に真言密教を学びました。天徳3年（959年）に寛静から受戒し、天禄3年（972年）には義蔵と協力して愛宕山に伽藍を建てることを誓い合いました。

入宋を志した奝然は、永観元年（983年）に宋へ渡りました。天台山を巡礼し、汴京を経て五台山を巡りました。太宗から大師号と新印大蔵経を授かり帰国する際、インドの優填王が造立したとされる釈迦如来立像を模刻し、その由来記を胎内に納めました。寛和2年（986年）に帰国すると、翌寛和3年（987年）に請来した釈迦像を京都上品蓮台寺に安置しました。同年には法橋に任じられ、永祚元年（989年）から3年間、東大寺別当を務めました。

奝然が請来した釈迦如来立像は、彼が伽藍建立を誓った愛宕山麓に清凉寺が建立され、没後に安置されました。この清凉寺は、現在も京都に存在し、奝然が持ち帰った釈迦如来立像を所蔵しています。

また、奝然が宋の太宗に献上した『王年代紀』は、『宋史』日本伝に収録されており、『新唐書』日本伝も『王年代紀』を参照したと考えられています。

著作

『奝然在唐記』

参考文献

森克己「東大寺僧奝然入宋への志向」, 『禅研究所紀要』, 1976
山口修「「奝然入宋求法巡礼行並瑞像造立記」考」, 『佛教大学仏教学会紀要』, 1993
浜田久美子「奝然　――最初の入宋僧――」, 『人物で学ぶ日本古代史　3』. 吉川弘文館, 2022
『論集 日宋交流期の東大寺　奝然上人一千年大遠忌にちなんで』
東大寺「ザ・グレイトブッダ・シンポジウム 第15号」法蔵館、2017年12月

関連項目

日延
寂照
成尋
* 戒覚

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