奥山民枝

奥山民枝は、1946年に生まれ、日本の美術界で独自の地位を築いてきた画家、芸術家です。彼女は、大学卒業後に油絵や日本画といった絵画制作を独学で始めました。20代の頃から、ヨーロッパ、北米、南米、インドネシアなど世界各地を旅し、その経験が彼女の作品に大きな影響を与えています。

奥山の初期作品から一貫して見られるのは、自然の中に潜む生命力や、そこに息づくエロティシズムへの深い着目です。山、雲、太陽などの自然のモチーフを繰り返し描きながら、独自の視点で自然の本質を捉えようとする姿勢は、彼女の作品を特徴づける重要な要素となっています。

1992年には、彼女の代表作の一つである「山夢」が第35回安井賞を受賞し、その芸術性が広く認められました。この受賞は、奥山民枝の画家としてのキャリアにおいて、大きな転換点となりました。

経歴

奥山民枝は、戦時疎開先の新潟県高田市寺町（現在の新潟県上越市寺町）で生まれ、その後東京へ転居しました。1965年には東京芸術大学美術学部工芸デザイン科に入学。在学中から舞台美術にも関わり、1966年には現代演劇協会ホール「令嬢ジュリー」の舞台壁画制作や、草月会館「ジョン・シルバー」の舞台装置制作を手掛けました。1967年には、日生劇場「桜の園」の舞台壁画制作も担当するなど、幅広い分野で才能を発揮しました。

1969年に東京芸術大学美術学部を卒業後、王立サン・フェルナンド美術アカデミー名誉留学生としてスペインに渡りました。ヨーロッパ各国の美術館や美術大学、寺院などを訪問し、ユーラシア大陸を横断する旅行を経て1972年に帰国。1974年には北米横断旅行を敢行するなど、世界各地を旅して見聞を広めました。

1978年には、シロタ画廊で初の個展を開催。この年、彼女の作品がドラマー村上寛のアルバム『Dancing Sphinx』のジャケットに使用されたことも、彼女の活動を広く知らしめるきっかけとなりました。また、1978年にはインドネシア諸島、1979年にはイースター島、ガラパゴス諸島を含む南米大陸一周など、世界各国を旅しました。

1979年には、鈴木宏昌らによるザ・プレイヤーズのアルバム『GALAXY』のジャケットも担当。1987年には、朝日新聞朝刊に連載された干刈あがたの小説「黄色い髪」の挿画を担当するなど、美術界以外でも活躍しました。

2005年には、広島・尾道大学（現在の尾道市立大学）の教授に就任し、2012年に退官するまで後進の育成にも尽力しました。2010年には、第31回広島文化賞を受賞し、その功績が改めて評価されました。

奥山民枝の作品は、自然の造形美や生命力、そして人間の根源的な欲求を深く探求するものであり、その独特の感性と表現力は、多くの人々を魅了し続けています。彼女の芸術活動は、日本の美術界において、重要な足跡を残しています。

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