奥村昭夫 (映画監督・翻訳家)

奥村昭夫（おくむら てるお、1943年 - 2011年）は、日本の映画監督であり、翻訳家としても知られています。福井県出身で、東京大学文学部仏文学科を卒業後、映画の世界へと足を踏み入れました。

映画監督としてのキャリア

奥村昭夫の映画監督としてのキャリアは、1967年の第一回草月実験映画祭で、初監督作品『猶予もしくは影を撫でる男』が最優秀作品賞を受賞したことから始まりました。この作品は、彼の実験的な映画制作への挑戦を象徴しており、その後の活動への大きな足がかりとなりました。

1968年には第二作『三人でする接吻』を発表し、1970年には椎谷建治の俳優デビュー作となった『狂気が彷徨う』を監督しました。これらの作品は、当時の日本の映画界において、新たな表現方法を模索する試みとして注目されました。しかし、その後、奥村昭夫は映画監督としての活動を一旦中断し、翻訳家としての活動に重点を置くようになります。

翻訳家としてのキャリア

奥村昭夫は、翻訳家として、特に映画理論や映画史に関する書籍の翻訳で多大な貢献をしました。1976年には『気狂いゴダール ルポルタージュ・現場のゴダール』を翻訳し、映画監督ジャン＝リュック・ゴダールの作品と理論を日本に紹介しました。この翻訳は、日本の映画研究者や映画ファンにとって、ゴダールを深く理解するための重要な資料となりました。

また、1982年には『ゴダール 映画史』を翻訳し、ゴダールの映画制作における思想や方法論を体系的に紹介しました。さらに、『作家主義 映画の父たちに聞く』（1985年）では、映画監督たちのインタビューを通して映画の本質に迫り、映画史における作家主義の重要性を浮き彫りにしました。

その他にも、アンドレ・バザン『ジャン・ルノワール』やアラン・ベルガラ『六〇年代ゴダール 神話と現場』など、映画史や映画理論において重要な書籍を多数翻訳しています。

奥村昭夫の功績

奥村昭夫は、映画監督として実験的な作品を手がけただけでなく、翻訳家としても映画理論や映画史の分野で重要な貢献をしました。彼の翻訳は、海外の映画理論や思想を日本の映画界に紹介し、日本の映画文化の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

特に、ジャン＝リュック・ゴダールに関する翻訳は、ゴダールの難解な作品や理論を日本に普及させる上で重要な役割を果たしました。彼の翻訳活動は、映画監督としてのキャリアとは異なる形で、日本の映画文化に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

奥村昭夫の業績は、映画監督、翻訳家としての二つの側面から評価されるべきであり、彼の残した足跡は、今後の日本の映画界に大きな影響を与え続けることでしょう。

監督作品

猶予もしくは影を撫でる男（1967年）
三人でする接吻（1968年）
狂気が彷徨う（1970年）

訳書

ミシェル・ヴィアネイ「気狂いゴダール ルポルタージュ・現場のゴダール」（三一書房、1976年）
「ゴダールの全体像」（三一書房、1979年）
アンドレ・バザン「ジャン・ルノワール」（フランソワ・トリュフォー編、フィルムアート社、1980年）
ジャン＝リュック・ゴダール「ゴダール 映画史」（筑摩書房（全2巻）、1982年／ちくま学芸文庫（全1巻）、2012年）
「作家主義 映画の父たちに聞く」（リブロポート、1985年 / 改訂版・フィルムアート社、2022年）
「ゴダール全評論・全発言」（アラン・ベルガラ編、筑摩書房「リュミエール叢書」全3巻、1998年、第3巻、2004年）
アラン・ベルガラ「六〇年代ゴダール 神話と現場」（筑摩書房「リュミエール叢書」、2012年）

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