奥田敏輝

奥田 敏輝

1949年1月2日、大阪府豊中市に生まれた奥田敏輝（おくだ としてる）は、プロ野球選手として阪神タイガースに所属した投手です。短い生涯ながら、高校野球、そしてプロ野球の世界でその名を刻みました。

高校時代

大阪府立桜塚高等学校に進学した奥田氏は、2年生の秋からエースとなり、同時にチームの主将としてもリーダーシップを発揮しました。特に1966年夏の全国高等学校野球選手権大阪府予選では、その投球は目覚ましいものでした。大会を通じて6試合すべてを完封し、58.1イニング連続無失点という驚異的な記録を樹立しました。中でも準決勝での一戦は、高校野球史に残る名勝負として語り継がれています。相手は後にプロ野球界を代表する大投手となる大阪学院大学高校の江夏豊氏。両エースによる息詰まる投手戦を、奥田氏は1対0のスコアで完封勝利という形で制しました。しかし、続く決勝戦では、北陽高校を相手に0対4で完封負けを喫し、惜しくも甲子園出場は叶いませんでした。この北陽高校には、後にプロで活躍する長崎慶一氏が中堅手としてプレーしていました。

プロ野球選手として

高校での圧倒的な投球が評価され、奥田氏は1966年のプロ野球ドラフト会議で、阪神タイガースから一次ドラフトの5位指名を受けて入団しました。プロ入り後の背番号は、入団当初の「72」から「30」、「13」、「32」と変更され、現役最後のシーズンとなった1972年には「48」をつけていました。

プロ入り後、1968年に初めて一軍に昇格し、主に中継ぎ投手として7試合に登板しました。そして、プロ野球選手として最も輝かしい成績を残したのが1969年です。この年、二軍であるウエスタン・リーグでエースとして活躍し、15勝を挙げて見事最多勝のタイトルを獲得しました。しかし、二軍での好成績を一軍の舞台で安定した結果に結びつけることは難しく、一軍定着には至りませんでした。スリークォーター気味のフォームから投じられる決め球のシンカーやカーブを武器としましたが、プロの高い壁に阻まれ、1972年シーズン終了をもって現役を引退しました。

引退後の人生と友情

プロ野球選手としてのキャリアを終えた奥田氏は、一般企業でサラリーマンとしての生活を送りました。その後、独立して水道関連の会社を設立し、実業家としても成功を収めました。

特筆すべきは、高校時代のライバルであり、プロ野球でも同期入団となった江夏豊氏との関係です。甲子園予選での熱戦から始まった二人の交流は、プロ入り後も続き、強い友情で結ばれていました。奥田氏は、野球を通じて培われたこの絆を生涯大切にしました。1996年には、高校時代の準決勝での対戦からちょうど30周年を迎えたことを記念し、奥田氏が中心となって桜塚高校と大阪学院大学高校の当時のメンバーを集めた再対決イベントを実現させるなど、その交流は引退後も続きました。

奥田敏輝氏は2006年9月14日、57歳で惜しまれつつこの世を去りました。短い生涯ではありましたが、高校野球で歴史に残る記録を樹立し、プロ野球選手としてウエスタンリーグのタイトルを獲得、さらに引退後は実業家としても成功を収めるなど、多方面で活躍した人物です。

もう一度検索