女子修道院長

女子修道院長（じょししゅうどういんちょう）

女子修道院長は、修道女の共同体の長であり、多くの場合、女子修道院の長を務めます。その語源は、ラテン語で「修道院長」を意味する「abbas」の女性形である「abbatissa」に由来します。

概要

カトリック教会、東方正教会、コプト正教会、聖公会などの修道院において、女子修道院長の選出手続き、地位、権限、権威は、通常、男子修道院長と同様に扱われます。女子修道院長は、40歳以上で、かつ10年以上の修道女経験を持つ女性であることが求められます。その選出は選挙によって行われ、共同体に所属する修道女の秘密投票によって決定されます。

カトリック教会の場合、修道院長と同様に、ローマ教皇庁の承認を受けた後、女子修道院長は、修道院がある地域の司教、または認可を得た男子修道院長や他の司教による祝福を受け、正式に就任します。男子の修道院長とは異なり、女子修道院長は指輪と修道会規則の文書のみを受け取ります。しかし、古くからの慣習により、共同体を率いる際には牧杖を持つことが認められています。また、伝統的に、女子修道院長は役職の象徴として、修道服の胸に十字架をつけることになっています。ただし、男性の宗教者とは異なり、聖職者としての叙任を受けていないため、礼拝において祭服を着用することはなく、自身の宗派の修道服を着用します。

役割と責任

女子修道院長は、男子修道院長と同様に、教会法に基づく長であり、男子修道院長や司教と同等の権威を持ちます。教会組織の男性聖職者は、職権により、建物、監督管区、共同体を構成する人々を管轄します。

女子修道院長は、修道院の修道女たちの誓願を受け、候補者を修道会の修練女として受け入れることができます。また、共同体の成員を研究、牧者としての務め、宣教などに送り出すことや、教会法や世俗の法が許す限りにおいて、教区や管区の儀礼執行業務を補佐させることも可能です。これらの活動は、共同体の場所の中にとどまることもあれば、外部に及ぶこともあります。管轄権は全て女子修道院長にあります。

しかしながら、女子修道院長には一定の制限も課されています。サクラメント及びそれに関連する機能を持つものを執り行うことはできず、これらの儀礼は男性の聖職者によって行われます。女子修道院長は、叙任された聖職者を助けたり、必要に応じて共同体の構成員を堂役、聖餐奉仕者、読師など、叙任されていない者にも開かれている聖職業務につかせることができます。ミサを執り行ったり、結婚に立ち会う聖職者となることはできませんが、平信徒として友人の結婚式に立ち会うことは可能です。告解を聞いたり、病者の塗油を行ったり、叙任を受けた聖職者としてミサを司式したり、共同司式をすることもできません。自らの共同体とともに聖務日課を司ったり、共同体に対して聖書について話したり、聖職者に限られていない祝福を与えることはできます。他方、礼拝や祝祷を司ったり、説教をしたり、ミサ中に福音を朗読したり、侍者に任命されることはできません。女子修道院長は、聖職者を叙任する権限を持たず、叙任された聖職者により任命されるべき非叙任者の職務に自分の修道院の構成員を任命することもできません。これは、教会法において女性は聖職者となれないためです。また、修道院や自らの土地よりも外の領域に教会法による権威を及ぼすこともできません。

歴史

歴史的には、ケルト系キリスト教の修道院において、女子修道院長は男女両方の修道者の共同修道院を司っていました。最も有名な例は、聖女キルデアのブリギッドであり、アイルランドのキルデアに修道院を作る際に指導的役割を果たしました。1115年にフランスのシノンとソミュールの近くにあるフォントヴロー修道院を建てたロベールは、男女の修道者全員の統治を女性の指導者であるペトロニル・ド・シュミーレに委ねました。

ルター派の教会では、女子修道院長（Äbtissin）の称号は、宗教改革後も存続した修道院の長を指していました。これらの組織は、信仰に基づく寮であり、通常、高貴な生まれの未婚女性に家と収入を提供していました。女子修道院長の職務は、非常に社会的に尊敬される役割であり、過去においては、国を治める一族の王女が務めることもありました。神聖ローマ帝国の解体までは、クヴェードリンブルク修道院の女子修道院長は、帝国直属領の長でした。

ローマ・カトリック教会には現在、200人ほどの女子修道院長がいます。

著名な女子修道院長

アルジャントゥイユのエロイーズ：中世の作家、ピエール・アベラールの恋人
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン：中世ドイツの神秘主義者・作曲家
エリーザベト・フォン・デア・プファルツ：ヘルフォルト女子修道院長、哲学者
ルイーゼ・ホランディーネ・フォン・デア・プファルツ：モビュイソン女子修道院長、画家
イサベラ・レオナルダ：17世紀イタリア、ノヴァーラの聖ウルスラ修道院長、作曲家

ロシア正教の女子修道院長

マリア・オドーエフスカヤ：15-16世紀、ノーヴゴロトのミハーリツキィ修道院長、「回想録（ザピスキイ）」はロシア文学における初めての女性による回想録
* タイーシア・ソローポワ：1841-1915年ごろ、レーウシン修道院長、深遠な女性神秘家で「回想録」がある

もう一度検索